出版社内容情報
祖母の葬式が終わり、家族で祖父の生家に向かった天宇(読み:たう)。母屋の蔵で、祖父が十代のころに書いた手記を見つけた。中学生だった祖父に興味をもち、「開くなら、あそこがいいな」と、町を見下ろす休憩所にやってきた。そこで出会った女性に「わたしがあなたなら、読むかもしれません」と、背中を押された天宇。
昭和二十六年八月と記された表紙が風でめくれると、こう書かれていた。
「あれから六年がたった。
……できるだけ正しく、あの年のことを記しておきたい。
だからまず、あの人との出会いを書かなければならない──」