出版社内容情報
鳥居きみ子の夫は、「知の巨人」ともいわれ、明治から昭和時代にかけて活躍した人類学者、鳥居龍蔵です。彼の生涯や研究業績を紹介した本はたくさんありますが、きみ子のことはこれまで紹介されたことがほとんどありません。じつは、「家族とともに調査・研究する」という形で、女性の活躍が厳しい時代を生き抜いた先駆的な研究者なのです。人類学のなかでも、昔から伝わる生活・風習・伝説・歌などを調べる民族学を切り開きました。その生涯をはじめて伝える一冊です。
内容説明
人類学者・鳥居きみ子をはじめて描いた人物伝。夫・龍蔵や家族とともに、まるで探検するようなフィールドワーク(野外調査)を進めた鳥居きみ子。人類学のなかでも、昔から伝わる生活・風習・伝説・歌などを調べる民族学を切り開きました。さまざまな困難に直面しながらも、龍蔵に対する大きな信頼と度胸のよさでつきすすんだきみ子。これまで紹介されることがなかった人物の生涯を描きます。
目次
第1章 自分の生きる道(男子だったら…;やりたいことは? ほか)
第2章 赤ちゃん連れの調査(こんなはずでは…;モンゴルへ ほか)
第3章 鳥居人類学研究所(周囲の人たち;子どもたち ほか)
第4章 戦禍の一家(北京・燕京大学;戦中、戦後の生活)
著者等紹介
竹内紘子[タケウチヒロコ]
1944年生まれ。徳島大学教育学部卒。県立・私立高校国語教師として勤務(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
やすらぎ
158
一歩踏み出せば何かが起こるかもしれない。その強い思いがなければ人生は全く違うものになっていただろう。我が道を進みたければ不安は多く必ず苦労するが、それを受け入れなければ道は拓けない。戦争という世の流れに振り回されながら、フィールドワークを家族とともに続けた女性研究者の記録は貴重である。書物からだけでなく現地の人と触れ合い、風土を感じ考察する。あらゆる組織から離れ立ち上げた鳥居人類学研究所は東アジアで歩みを止めなかった。本書は貴重な写真が収録され、読者も共に研究している体感があり、後世に残したい一冊である。2025/05/25
chiaki
32
2025年中学校課題図書。文化人類学者鳥居龍蔵の妻で、共に研究者として明治〜昭和を駆け抜けた鳥居きみ子の伝記。女性は家庭に入って家を守るのが良しとされた時代。やりたいことに専念し信念と使命を貫いたきみ子の生き方はまさに朝ドラ的。モンゴルや中国に赴き、現地民族にとけ込みながら彼らの風習や習慣、伝承などを採集するフィールドワークを進めた功績は、龍蔵始め家族の理解と協力なくして語れない。鳥居家の伝記かな。伝記は読むと心揺さぶられて影響を受けちゃうことが多いですが、これは描き方があんまりな気がします〰️。2025/05/27
Yemi
28
女は子供を産み育てることが仕事という時代に自分の道を生きた女性のお話。夫の影響を受けて興味を持ち子育てしながら共に研究をするという生命力溢れる女性。芯の強さと行動力、夫と家族を支える妻としての生き方は圧巻です。小さな子供をおいてまで外国へ行ってしまうというのはいかがなものかとは思いますが。中学生の課題図書ということで若い世代の子供たちに感じるものがあればいいなと思います。2025/06/14
k sato
27
明治のワーキングマザー、鳥居きみ子。四人の子育てをしながら家事も研究もこなす姿に圧倒された。夫・鳥居龍蔵は「町の研究者」として自宅に「鳥居人類学研究所」を構え、一家でフィールドワークに取り組んだ。明治に女性が研究の世界で活躍するのは困難だった。きみ子の姿からは、津田梅子や村岡花子のように、時代を切り開いた女性たちの面影がよぎる。私には、三足の草鞋を履く生活は真似できない。でも、家族と共に知を追究する暮らしには、理想郷のような憧れを抱いた。もし私が研究所を開くなら、鳥類研究所と猫研究所になるかもしれない。2025/07/19
まる子
21
当時、学歴はなかったけれど、大学での助手として知識を身につけ、幅広い人類学で世界的な学者になった鳥居龍蔵の事も知らず。その妻のきみ子の伝記がなかったので書かれた本書。自分が何をしたいのかを追い続け、明治、大正、昭和の時代に職業婦人として生きた。生後わずかな乳飲児を連れて海外に調査をするとは、今の時代でも無謀だと言われてもおかしくはない。学問に男女の区別はなく、周囲の力を借りながらも結婚し、5人の子供を産み、人類学のフィールドワークを通して自分らしく生きた女性。2025/07/19
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