内容説明
平和な未来なんてあたりまえに来るって思ってたけど…中学生の琴葉と町工場で働く少年・天馬。ふたりは、それぞれの家族の物語を知って―
著者等紹介
工藤純子[クドウジュンコ]
東京都生まれ。2017年、『セカイの空がみえるまち』(講談社)で、第3回児童ペン賞少年小説賞を受賞。日本児童文学者協会会員。全国児童文学同人誌連絡会「季節風」同人
酒井以[サカイサネ]
イラストレーター(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ゆみねこ
75
精密機械工場の娘・中2の琴葉と琴葉の家に住み込み工場で働く天馬。家族の物語であり、戦争とそれで傷ついた人々の物語でもある。読み友さんの感想で知った1冊、とても良かったです。工藤純子さん、初読み。2021/10/04
はる
67
町工場の娘・琴葉と、そこに住み込みで働く少年・天馬。ふたりの青春物語であり、家族の物語であり、そして戦争のことも…。詰め込み過ぎかなあ、と思いましたがそれぞれが作用しあい、うまく纏まっていると思います。複雑な家庭で育ちながら、優しく真っ直ぐな天馬が格好いい。ラストはちょっと出来過ぎな気もしますが、爽やかな読後感。戦争がこの物語のひとつの大切なテーマ。特に無言館の場面はあまりに悲しく、胸がしめつけられます。2021/09/23
ぶんこ
52
小さな町工場の娘中学2年の琴葉と、家族の諍いが絶えない家庭から逃げ出し、住み込みで家族の一員として働き出した天馬17歳。琴葉の父は信念の人。人を傷つける製品は造らないと受注を断ったことで家計が苦しくなる。そんな父を疎ましく思っていたが、天馬の母と祖母の過酷な諍いが、祖母の癒えない戦争体験からと知ったこと、徴兵された画学生が遺した絵が集められた美術館に行った事などから、戦争が人々へ消しがたい痛みをのこすことを知る。「憎しみをぶつけても、新たな憎しみを生むだけ」・・・本当にそう、と思う私は考え無しなのか。2023/06/09
ムーミン
45
「選択肢がひとつしかなかったら、そこから逃げたくなるのはあたりまえだって。選択肢は多い方がいい。彼の人生は彼のものだから、選ばせてせてやってほしいって」p962023/09/14
東谷くまみ
41
あまりにショックで忘れられない映像がある。少し前になるが幕張で開かれた武器の見本市(だと思う)。誇らしげに自社の‘商品’を説明する人、笑顔でカメラに親指を立てる人。その‘商品’の先にあるたくさんの悲しみや苦しみを想像したことはないのかとやりきれなさで胸がいっぱいになった。「人の手はなんでも生みだすことができると知った。」私たちには何ができるだろう、自分の手のひらを見つめる。大人も子供も、国も人種も超えてたくさんの人が手を繋げたら。過去の過ちからの学び、積み上げてきた平和への想いを手渡していけるなら。→2023/08/14