出版社内容情報
円周率3.14が、まだ使われていなかった江戸時代。円に魅せられ、その謎を解明しようとした数学者がいた。円周率の計算や、筆算による計算の発明など、数々の偉業を残し、日本独自の数学・和算を、世界と競えるレベルにまで押し上げた関孝和の物語。
内容説明
現代ではあたりまえの円周率“三・一四”が、まだ使われていなかった江戸時代。円に魅せられ、その謎を解こうとした数学者がいた。かれの名は、関孝和。日本独自の数学・和算を、世界に通じるレベルまで高め、死後、算聖とよばれた数学者の生涯を、かれを支えた人々とのつながりの中で描く。子どもと大人が共有できる新しい児童文学。
目次
第1章 さむらいの子の勉強
第2章 円との出会い
第3章 円の謎
第4章 円周率をさがす旅
第5章 御用第一に
第6章 世界に通じる数学者
著者等紹介
鳴海風[ナルミフウ]
1953年、新潟県生まれ。自動車部品メーカーのデンソーで、長くエンジニアとして働きながら、和算を題材にした小説を執筆。1992年、「円周率を計算した男」で歴史文学賞。2006年日本数学会出版賞。関孝和数学研究所研究員
伊野孝行[イノタカユキ]
1971年、三重県生まれ。東洋大学卒業。セツ・モードセミナー卒業。第44回講談社出版文化賞さしえ賞。第53回高橋五山賞。東京イラストレーターズ・ソサエティ会員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
131
この本は小中学向けの本だと思います。ただ大人にも非常にわかりやすくしかもレベルをあまり下げないで書かれているので、円周率について日本の江戸時代の数学者がかなり役割を果たしていたということが楽しめました。関孝和の生涯とその数学への熱意を若い人向きに楽しんで読んでもらえる工夫がされています。2017/07/02
夜間飛行
76
関孝和の伝記で、主に十代の頃を取りあげている。人には恋と学問が春風のように訪れる季節があるらしい。師の娘・香奈への恋心を秘めて二人で目黒不動に出かけていく場面は眩しいような気がした。そこで見た算額の問題が運命を導いていくことからして、香奈という娘は孝和にとってアニマ的な存在なのかも知れない。夢のお告げによって建てられた目黒不動が起点になるのも何かの縁か。その後、孝和はいくつかの難問を夢の中で解いている。私の十代はもっとじめじめしていたと思うけれど、爽やかな風を胸一杯吸い込むような気分はやはり懐かしかった。2017/08/02
森林・米・畑
52
謎の多い江戸前期の数学者関孝和。群馬県の上毛かるたにも出てくる偉人。 彼の若い頃から晩年までの物語。資料が少なく、彼の生年、出生地など不明な点も多いようです。 今まで特に気にもしなかった円周率。それを江戸時代から疑問視して数学研究と藩の仕事との両立に励んだ。 彼の残した数学(和算)の功績は死後、200年経って発見された。 数年前の中学生読書感想文課題図書ですが、なかなか勉強になります。2019/08/13
bluemint
32
最近中学の数学を勉強し直しているが、参考書を探している途中で見つけた本。面白くて感動的。独自に思考を重ね西洋の最先端以上の考え方を創設した。また、当時の日本の数学愛好家の層が厚いことも初めて知った。西洋では最初の発見者が、それに自分の名前をつけて名誉としたのに対し、江戸時代の数学者たちはそのようなことを考えもしなかった。彼らはただ数学が好きで、真実を知りたかっただけである。御用第一に生きた関孝和はその代表だった。このメンタルは極めて日本人的で、誇りに思う。2021/02/10
昭和っ子
31
数学上の偉大な業績をいくつも成し遂げながら、日本において評価されなかった関孝和。彼は普通のさむらいとして実生活を大切にしつつ、数学によって真理を追求し、仲間たちと交流を深めていた。理想の人生だと思うが、ひねくれた見方をすれば「これから仕事だけ一筋の生き方ではやってけないよ〜」という子供たちへの警告にも見える。数学で切磋琢磨できる魅力的な女性の存在がありながら、結婚という事になると何の迷いもなく「家」を継続させる他の女性との縁談を選ぶが、その姿勢が意外と爽やか。「恋愛至上主義」は私らの時代の呪縛であったか。2017/08/18