澄みわたる大地

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  • サイズ A5判/ページ数 504p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784773812077
  • NDC分類 963
  • Cコード C0097

内容説明

外交官の子息として少年時代からアメリカ大陸の名だたる諸都市を渡り歩いた著者は、20代半ばでようやく母国に落ち着いた。彼は「余所者のメキシコ人」として、多様な人種と社会階級が混在する猥雑な大都市=メキシコ・シティに魅せられた。無名に等しい作家の初長編は、斬新な文学的実験、方言も俗語も歌も叫びも、そして沈黙すら取り込んだ文体、街中から/豪邸から/スラムから聞こえてくる複数の声の交響によって、「時代の感性」を表現し、人びとの心を鷲づかみした。

著者等紹介

フエンテス,カルロス[フエンテス,カルロス][Fuentes,Carlos]
1928~。外交官の息子としてパナマに生まれた後、キト、モンテビデオ、リオ・デ・ジャネイロ、ワシントンDC、サンティアゴ(チリ)、ブエノス・アイレスなど、アメリカ大陸の諸都市を転々としながら幼少時代を過ごし、文学的素養とコスモポリタン的視点を培う。1952年にメキシコに落ち着いて以来、『オイ』、『メディオ・シグロ』、『ウニベルシダッド・デ・メヒコ』といった文学雑誌に協力しながら創作を始め、1955年短編集『仮面の日々』で文壇にデビュー

寺尾隆吉[テラオリュウキチ]
1971年名古屋生まれ。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了(学術博士)。メキシコのコレヒオ・デ・メヒコ大学院大学、コロンビアのカロ・イ・クエルボ研究所とアンデス大学、ベネズエラのロス・アンデス大学メリダ校など6年間にわたって、ラテンアメリカ各地で文学研究に従事。政治過程と文学創作の関係が中心テーマ。現在、フェリス女学院大学国際交流学部准教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

スミス市松

28
1950年代の経済成長著しいメキシコ・シティを舞台とした群像劇。人間一人ひとりの活動が現実の都市を築きあげるように、本書を形成しているのは時間/空間を凝縮させ夥しいイメージを配置した都市風景を断片的に切り取っていく無数の視覚的描写――多種多様な人々の心の奥底で蠢く〈声〉を汲みあげる異様なまなざしである。そして著者があらわそうとしたのは、銀行家フェデリコ・ロブレスを中心として築かれる“資本としての都市空間”の裏側にある、人間の魂の集積によって築かれるもうひとつの都市空間――「偽りのない本物のメキシコ」だ。2015/06/28

まふ

15
200ページまで真面目に読んだがあとはパラパラめくりで終えた。メキシコを国として文化として出生地として真剣に考えた作者の答えみたいな本。ピンチョンの「ヴァインランド」ケルアックの「オンザロード」をまぜこぜにしたような取り留めもない話。登場人物がやたら多く出てくるが、今一つスジがつかめなかった。スペインはヨーロッパに乗り遅れ、ロシアはヨーロッパを拒絶したがメキシコだけが根本的にヨーロッパと相容れない世界→過去よりも未来指向→独自性とは純粋というより混淆ということのようだ。2022/03/20

おおた

14
太陽の熱、大地の鍋で煮込まれたメキシコの濃縮満点人間関係。『緑の家』は大量の人物が出てきても一つの流れに沿っていたので理解しやすいが、てんでばらばらの人々を1冊にまとめあげて、ラストの大合唱につなげたフエンテスは天才と言うよりも奇才。付録の人物一覧、メキシコの歴史も役に立つが、1周しただけでは全貌がほとんどつかめない。人の交わりと交わらなさを絶望しながら何度も読み返したい。2012/07/21

猫のゆり

12
独立の後も指導者が幾度も入れ替わり、長く複雑な歴史に翻弄されるメキシコ。見切りをつけて一旦は亡命し、また帰ってくる人たち。小作人から銀行家となり、土地を売買して成り上がった者。それを見下す旧家のブルジョワたち。底辺で貧困と病に倒れる者。様々な階級に属す沢山の人たちの生きた断片が織りなす物語は、決して読みやすくはないし、正直息切れした。が、読み終えた後、登場する大勢の人々の心に聳える祖国メキシコ(=澄みわたる大地)の大きさが胸に迫ってきて、いいようのない感動を覚えた。丁寧な人物表と年表もとても有り難かった。2012/04/29

saeta

11
骨格をなすべく軸になる話が曖昧で、かつ登場人物もこれまた多く、巻末の登場人物一覧を眺めながら、どうにか読み終えた。時々枝葉のように差し込まれる小品のような物語(2部の最後半部のメルセデスの話など)がなかなか味わい深く楽しませてもらった。再読すれば、より理解度が増しそうな気がする。フエンテスを続けて読んでみたが、本当に多種多様なユニークな作品を産み出している稀有な作家だな。2022/09/02

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