内容説明
1910年代、世界に先駆けて社会革命を経験し、40年前後からは、大戦を逃れた大勢の亡命者を受け入れた、稀なまでの魅力を放つ20世紀メキシコ。本邦初紹介のメキシコの作家、ピトルは、この時代を背景に、ナンセンスと不条理、知的な諧謔に満ちた多声的な、瞠目すべき“疑似”推理小説を仕立て上げた。
著者等紹介
ピトル,セルヒオ[ピトル,セルヒオ][Pitol,Sergio]
1933年、メキシコのプエブラに生まれる。ベラクルス州での幼少時代、父、母、妹を相次いで亡くし、マラリア感染による蟄居生活を余儀なくされるなど、数々の不幸に見舞われる。メキシコ国立自治大学で法律を学び、1961年より長期の海外生活に入る。70年代以降は外交官としてベオグラードやワルシャワ、パリ、ブダペスト、モスクワ、チェコに滞在、多数の文学作品の翻訳を手がける。1959年に短篇集『包囲された時間』で作家デビュー。2005年にセルバンテス賞を受賞
大西亮[オオニシマコト]
1969年横浜市生まれ。現在、法政大学国際文化学部准教授。専門はラテンアメリカ現代文学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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茎わかめろん
5
30年前の殺人事件を追う歴史学者のミゲルは関係者に話をいてまわる。皆好きに語ってくれるので回りくどいけど'結局'が、きになってくる。推理小説のパロディだそう。なんて広がりのある物語なのでしょう。2012/07/08
rinakko
5
とても面白く読んだ。いみじくも作中に、ティルソ・デ・モリーナのある作品について“恐るべき仮面劇”という言葉を使う場面がある。まさにこの物語が陥っていく迷宮のような様相を暗示していて、印象的だった(しかもそういう小説大好き)。1942年に自分も住んでいたミネルバ館で起きた殺人事件の謎を解こうとする、歴史学者デル・ソラール。彼は当時の住人達への訪問を繰り返すが、謎の周辺をぐるぐる回るばかりの追跡劇は埒が明かない。なぜ人々は口を閉ざすのか…。2012/06/04
hiyo07
2
これは断じてミステリ小説などではなく、私が勝手にそう思って読み進んでしまっただけで、まさに、これもまた『不条理小説』の一端にあるのではないか?と。主人公デル・ソラールと同じく、メキシコの歴史をある意味で緻密に描いた作品だったのではないだろうか。題材はまさに歴史そのものであり、変革期にあったかつてのメキシコが本作の主人公なのだろう。この作品の裏にどれほどのものが読み取れるのか?その答えは1からメキシコの歴史を学んだ後に再読すれば得られるだろう。。。ということは、そのチャンスは訪れないのだろうな・・・。2011/07/25