内容説明
死刑→無期→死刑。各級裁判所の異なる判決に翻弄されながら、「生」への希望を失わなかった永山則夫。彼には夢があった。貧しい子どもたちも、学びながら仲間意識を育てることができるような塾をつくること。彼の遺骨は元妻の手によって網走の海に還された。彼の魂は、遺言に乗せられてペルーの港にたどり着いた。彼は死してやっと海を越えられた。
目次
プロローグ 海を越えて
第1章 受任―出会い
第2章 連続射殺魔事件
第3章 成長・変貌する少年
第4章 殺人か強盗殺人か
第5章 死刑か無期か
第6章 死刑と無期の判断を分けたもの
第7章 死刑への儀式と化した法廷
第8章 閉ざされた社会
第9章 不意の死刑執行
第10章 遺言のゆくえ
エピローグ 弁護の報酬
付論 永山基準とはなにか―無期になりうるものを死刑にできるか
著者等紹介
大谷恭子[オオタニキョウコ]
1978年弁護士登録。第二東京弁護士会所属。日本女子大学非常勤講師。沖縄大学客員教授。内閣府障がい者制度改革推進会議委員。元東京拘置所視察委員会委員。「永山子ども基金」代表。連合赤軍(永田洋子さん)事件、金井康治君自主登校裁判、アイヌ民族肖像権裁判(チカップ美恵子さん)、地下鉄サリン(広瀬健一さん)事件、日本赤軍(重信房子さん)事件などを担当(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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kaku
7
永山元死刑囚の裁判を担当した弁護士が、彼の境遇の悪さや、裁判の不公平さなどを主張している。法学部生にとって”永山基準”というワードは避けて通れない。そういう見方もあるのだな、と読んでおいても損はないように思える。ただ、どのような事情があろうと、無実の人を殺害した人間に同情することはできないし、死刑制度についても廃止論に傾くことはできない。2014/07/09
よきし
6
なんども読むのが辛くなり間をおきつつ読了。永山則夫はまず基金のコンサートで、それからクシアノビッチさんの『子どもと共に生きる』の本で知った。そしてこの本を読み、彼の生い立ちから事件、そしてその後の悔恨と生きることを考えた日々に心を揺らされた。また、東京拘置所が死刑執行後の遺品の一部を隠蔽していたりその死刑の際に何らかの暴行があったことをおもわせることなど、金子文子の死後対応とそっくりで日本という国家の非人道的性格を改めて痛感し、煮えくり返る。人が人を殺す暴力を国家が独占することはやはり許されざる事だ。2021/12/18
ますこ
4
いくら犯人の生い立ちが複雑だと言っても、何の罪もない人を殺してしまった事実は変えられないから私は同情出来ない!2012/12/11
Ayumi Katayama
2
『永山君は殺人を犯したものとして死刑制度の廃止を訴えた。その死刑廃止論は明快だった。犯罪は仲間殺しであり、これに死をもって報いれば憎悪しか生まない。憎悪の連鎖を断ち切るためには、国家こそがどんなことがあっても人は殺さないとの規範を示すべきである。憎悪の連鎖を断ち切り、仲間意識を再生させることが国家の義務であると。』―――これまで耳にしたことのある死刑廃止論の中で一番納得できるもののように思う。存続か廃止か。いずれにしても、これだけの強い意志、強い主張が必要なのではないだろうか。2015/11/26
羊
1
本当にたくさんのことを考えさせられました。一人の人間として誠心誠意働いていらっしゃることが伝わり、素敵な弁護士さんだなーと思いました。2016/12/28
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