内容説明
1994年、南アフリカ史上最初の普通選挙が実施され、その年のうちに、1960年から1993年までに起きた重大な人権侵害の全体像を明らかにするために「真実和解委員会」を創設する法案が起草された。委員会に課された任務は、真実を探り出して公表することと、このような悲惨な出来事が再び起きることを防ぐことだった。1996年から2年以上のあいだ、南アフリカの人々は毎日のように、目を背けたくなる自分たちの過去と直面することになった。アンキー・クロッホはラジオジャーナリストとして、犠牲者と加害者双方の証言を取材して「真実和解委員会」のすべてを報じた。痛切で心かき乱す言葉に満ちた本書によって、はじめて民衆の声が南アフリカの歴史となった。
目次
委員会ができるまで(わが同胞は決して嘆き悲しまなかった;われわれほど分け隔てられた者はいない)
初めての公聴会(より細分化され、広がっていく悲嘆の度合;裏切り話はいつでも作り変えられるに違いない;加害者たちの話の響き;濡れ袋とその他の幻想;二人の女性―それを異なった言葉づかいで聞いてみよう;罪はおのれの全責任とともに揺れ動く)
政治(政治に関する記録は、みずからをねじ曲げる;和解―二つの悪のうちのましな方;恩赦―亡霊を伴った道ゆき;政党の意見表明が定まる)
反応の数々(各地で血の雨が降る;心の深手に触れた手紙;われわれすべてに行き渡る―ツツからママセラまで;真実は女性である;そのとき大いなる心が張り裂ける)
緊張緩和(羊飼いと私自身の原風景;あやまちの悲劇;母が国民と向き合う;悲しみと慈愛に満ちた最愛の国)
著者等紹介
クロッホ,アンキー[クロッホ,アンキー][Krog,Antjie]
1952年、南アフリカ共和国旧オレンジ自由州のクローンスタットに生まれる。これまで、主にアフリカーンス語で数多くの詩集、戯曲、小説などを発表。そのうちいくつかの作品は、ヨーロッパの諸言語に翻訳されて国際的な文学賞を受賞している。報道記者としては、アンキー・サミュエルの名前で活動。真実和解委員会に関する報道に対して、著者と著者が率いた南アフリカ放送協会のラジオチームは、優れたジャーナリズムに与えられるプリングル賞を受賞。また著者個人として、海外紙に連載した同委員会に関する記事に対して、外国特派員協会賞を受賞した
山下渉登[ヤマシタショウト]
1951年。金沢大卒。フリー編集者をへて、小説の執筆、捕鯨史研究にたずさわる。著書:『青の暦1970』(北冬舎、2000年、泉鏡花記念金沢市民文学賞受賞)など
峯陽一[ミネヨウイチ]
1961年生。アフリカ地域研究、開発経済学を専攻する。現在、同志社大学大学院グローバルスタディーズ研究科教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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メルセ・ひすい