出版社内容情報
バイクツーリングにはまって以来、訪れた国は111カ国。眼前を横切れば、何をおいても「ご挨拶」しに近寄らずにはいられないくらい犬好きの筆者にとって、旅人を温かく迎えてくれるワン公は、犬と人間生活の距離感やそれぞれの国柄を体現している存在らしい。犬好きになった幼少の頃の体験と、それ以来数十年にわたって出会った犬にまつわるエピソードを50話で紹介し、さらに各国の犬事情をもつづった、ほのぼの気分満載の旅フォトエッセイ。犬嫌いは犬好きに、犬好きはもっと犬好きになる本
まえがき
二〇〇一年までの旅で出会った犬たち
第1話 サハラを彷徨うマラドーナ ●アルジェリア
第2話 メコンの野良くん ●タイ
第3話 神々の島に暮らす硬派なドギー ●インドネシア
第4話 「カンポ」の犬たち ●メキシコ
第5話 カリブのクロちゃん ●キューバ
第6話 マヤ族の犬、ソンブラ ●グアテマラ
第7話 「温泉町」のセクハラ犬 ●エクアドル
第8話 「グラン・カジノ」のお嬢様 ●エクアドル
第9話 マッチョなサスケ ●ペルー
第10話 泣かないで ●チリ
第11話 パタゴニアの犬模様 ●アルゼンチン
第12話 旅人を迎えるピースケとドンちゃん ●アルゼンチン
第13話 大地の子、テハ ●ブラジル
第14話 哀愁のロマリオ ●スペイン
第15話 放浪の旅をするクラウディアとシェフェ ●スペイン
第16話 ヤキモチ焼きのティティ ●スペイン
第17話 客引きのゴムホース犬 ●ポルトガル
第18話 ポコの父ちゃん ●日本
第19話 お遍路犬のノラエモン ●日本
二〇〇一年から〇二年の旅で出会った犬たち――ユーラシア
第20話 セルゲイさんとサーシャの熱い関係 ●ロシア
第21話 イシククル湖の番犬、セーファ ●キルギス
第22話 「赤い砂漠」の老犬、カプラン ●ウズベキスタン
第23話 黒海のクロわん ●トルコ
第24話 腹ペコ親子、グロリアとマントゥ ●グルジア
第25話 酔っ払いじいさんと老犬 ●エストニア
第26話 戦争を知らないアトフ ●ボスニア・ヘルツェゴビナ
第27話 エーゲ海の島にて ●ギリシャ
第28話 クレタ島の野良犬軍団 ●ギリシャ
第29話 世界を旅するアピ ●ギリシャ
第30話 小英国の「ドン・ファン」 ●マルタ
第31話 アルプスの谷で暮らすトミー ●フランス
第32話 ドラキュラの村にて ●ルーマニア
二〇〇三年から〇五年の旅で出会った犬たち――アフリカ・中東・アジア
第33話 「風の町」のガストン ●モーリタニア
第34話 「お嬢様」のティッギー ●セネガル
第35話 「ジャン・ジャン・ブレ」のウイスキー ●ガンビア
第36話 「黒い岬」のブラック ●コンゴ共和国
第37話 ホワイトレディのルル ●ナミビア
第38話 「グレンの森」に住むスヌッピー ●南アフリカ共和国
第39話 ワン公、川を渡る ●マダガスカル
第40話 バナナを食べるミルース ●マダガスカル
第41話 痩せ犬四人衆とローカルライフ ●モザンビーク
第42話 つぶらな瞳のハニー ●エチオピア
第43話 癒しの国のアブ・ジョス ●スーダン
第44話 ペトラの番犬 ●ヨルダン
第45話 モラッドさん一家の海辺暮らし ●レバノン
第46話 デブチンのサブジー ●インド
第47話 バラナシの路地にて ●インド
第48話 ブッダガヤの兄弟 ●インド
第49話 さよなら、ビクター ●インド
第50話 麗江のオセロ犬 ●中国
やっぱり犬が好き
あとがき
●まえがき
前世、私は犬だったのかもしれないと思うことがある。
なぜなら、私は異様に犬好きなのである。犬の気持ちも手にとるようにわかる。霊とコンタクトができるのが「霊能者」なら、さしずめ私は「犬能者」だといえる。世界を旅している間も、あっちこっちから犬が寄って来て私に話しかけてくる。
「ねえちゃん、ひとりぽっちでさみしいよ。遊んでよ」
「ねえちゃん、おなかがへったよ。何かくれよ」
そういって犬たちに見つめられると私はフラフラとおびき寄せられ、気がつくと彼らのいうなりにエサを与えたり、一緒に遊んでしまっている。人間の物売りや物乞いは冷たく無視できるのに犬に対しては無条件で降伏させられ、天命なのかと思えるほど、犬に尽くしている私がいるのである。物心ついた頃からずっと犬が身近にいるのも、こうして犬の話を書くのも、きっと前世から続く犬族との因縁のせいに違いない。
犬が好きなのと同じくらい、私は旅が好きである。東京生まれ東京育ちの私が、わざわざ信州にある大学へ進学したのも、「四年間も旅ができる」という軽い動機からだった。旅に憧れていたその頃、「旅」といえば「信州」だったのだから、我ながら単純だったんだなあ、とも思う。もちろん、そんなことを考えるのは私くらいで高校の同級生のほとんどは東京の大学へ進んだ。当然だ。東京には大学がたくさん集まっているし自宅から通学できるのだから、なにも地方へ行くことはない。都落ちだ、変わり者だなど周りからいろいろと言われたものの馬耳東風。私の場合、大学選びは旅先選びと一緒だったわけで、東京や東京近郊ではまったく意味がなかったのである。
そうして入学した大学の四年間、バイクという格好の旅の道具を駆使して信州を堪能し、無事に卒業したわけだが、就職しても旅への好奇心は膨らむ一方だった。結局、三年で会社員生活に見切りをつけ、かねてから憧れていた「海外をバイクで旅する」ことを実行に移した。ワーキング・ホリデー・ビザを取得しオーストラリアを九カ月間バイクでツーリングしてみると、その面白さにすっかりはまってしまった。もっと世界を旅したい。そう思いながら帰国すると、本格的な旅人生が始まり、以後、取材の仕事やプライベートな旅で国内外を思う存分旅することとなる。気がつくと、訪問国は百十一にも及んでいた。
「犬好き」で「旅好き」の私をしばし悩ませていたのが、旅の間、愛犬と会えないことだった。最初のうちは単にそのさみしさをまぎらわす程度に旅先の犬たちと浮気していたのだけれど、いろいろな国でたくさんの犬たちと遊んでいるうちに、日本で出会う犬たちと比べて表情も感情も豊かなこと、意思の疎通もスムーズにいくことがわかってきた。鎖に繋がれずに自由気ままな生活を送っている彼らは、他の犬や飼い主以外の人間たちとも接触する機会が多いためか、無闇に吠えたりおびえたりすることもなく、異邦人の私とも仲良くしてくれる。それでいて自分が「犬」であることを忘れないで、しかも社会の一員として暮らしているので、犬を観察していると、その国の社会事情やお国柄も見えてくる。犬たちと出会うことで旅の視野も広がった。
一方、日本では、旅をしても外国のように多くの犬と出会う機会がないことにも気がついた。何しろ日本の犬たちのほとんどは飼い犬で、大半は家の中に囲われているか庭に繋がれている。発展途上国のように放し飼いの犬や野良犬もいないし、欧米先進国のように犬を道連れに旅ができる環境が整っていないのだから、出会いがないのも仕方がない。しかし、徹底的に管理・隔離された日本の犬たちは、なんだかとても気の毒な存在に見える。
そんなわけで、私は外国へ行くと犬との出会いを積極的に求める。犬に話しかけ、エサを配り、はべらせたり連れ歩いたり、ときにはストーカーまがいに犬を観察する。そんな私を、周囲の人々は奇異な目で見ていたようで、一緒に旅をしていた夫はとても恥ずかしい思いをしたらしい。申し訳ないとは思うけれど、やっぱり私は犬が大好きだ。世界には日本ではなかなか出会えない個性的で魅力的な犬たちがたくさんいる。そんな素敵な犬たちのことを少しでも多くの人に知ってもらい、「犬族」の好感度アップに努めるのが、犬の生まれ変わりである私に課せられた使命なのでは?――その思いをこの本で汲みとっていただければ幸いである。
やっぱり私は犬が大好き! 各国の犬たちと対話しながらつづった、ほのぼの気分満載の旅フォトエッセイ。犬嫌いは犬好きに、犬好きはもっと犬好きになる本。
内容説明
やっぱり犬が好き!各国の犬たちと対話しながらつづった、ほのぼの気分満載の旅フォトエッセイ。
目次
二〇〇一年までの旅で出会った犬たち(サハラを彷徨うマラドーナ(アルジェリア)
メコンの野良くん(タイ)
神々の島に暮らす硬派なドギー(インドネシア) ほか)
二〇〇一年から〇二年の旅で出会った犬たち―ユーラシア(セルゲイさんとサーシャの熱い関係(ロシア)
イシククル湖の番犬、セーファ(キルギス)
「赤い砂漠」の老犬、カプラン(ウズベキスタン) ほか)
二〇〇三年から〇五年の旅で出会った犬たち―アフリカ・中東・アジア(「風の町」のガストン(モーリタニア)
「お嬢様」のティッギー(セネガル)
「ジャン・ジャン・ブレ」のウイスキー(ガンビア) ほか)
著者等紹介
滝野沢優子[タキノサワユウコ]
1962年、東京都足立区生まれ。信州大学農学部卒業。高校時代に旅とバイクに目覚め、大学時代にバイクツーリングにはまる。会社勤めを3年で辞め、世界中を旅しガイドブックやバイク雑誌で執筆。これまでにバイクでオーストラリア1周3万キロ、東欧1周1万キロ、サハラ砂漠縦断1万キロ、南米周遊4万6000キロ、ユーラシア・アフリカ大陸11万8000キロを走破した。訪れた国は111カ国にのぼる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。