出版社内容情報
大量破壊兵器、クローン人間、メディアに浸食される子供たち、ポルノと犯罪――現代社会の諸問題は「無知」に起因するのではなく、むしろ「進歩しつづける知識」に起因している。アメリカの良心を体現する著者が、暴走する巨大テクノロジーや「行き過ぎた」表現活動の矛盾点を整理し、有史以来の人間の精神的営みを記録してきた文学・神話・聖書に、その原点と解決の糸口を探る。核兵器やポルノを生み出す、際限のない「知」の欲求は自制できないのか。
●禁断の知識(上) もくじ
【序】
知識の危険性
知識と真理
誤作動する知識
開かれた知識
制約を失った知識
【第一部】――欲望とモラル――
◆1 禁断の知識とは何か
六つのカテゴリー
オカルト的知識
◆2 爆発する知識
原子爆弾とゲノム
純粋科学と応用科学
科学的探求の限界
葛藤の状態
◆3 ポルノグラフィーと犯罪
禁断の作家――マルキ・ド・サド
マルキ・ド・サドの人物像
預言者の復活
ムーア殺人事件
殺人狂テッド・バンティの説法
サドに迫る
「サドは火あぶりにすべきか」
潜在的毒物
◆4 スフィンクスとユニコーン
知るべきでない事柄
無知のヴェールと経験の炎
最後の物語
●まえがき(序)
世の中には知ってはならない事柄というものがあるだろうか。何の束縛もなく物事が企てられ、はてしなく拡張を続ける現在の私たちの文化にあって、個人であれ組織であれ、知識に制限を設けようなどと本気で提案することが可能だろうか。私たちは、このような問いかけの持つ道徳的な側面を把握し尊重する能力を失ってしまったのだろうか。
人は、しだいに大胆さを増しながら自然の神秘を次々に解き明かしているうちに、そうして得た知識が答え以上に多くの問題を生み出す段階に達してしまったのかもしれない。人口の爆発的増加とエイズによる死者の急増のようにまったく対極にある脅威も、元をただせばいわゆる「進歩」の産物のように思われる。しっかり歴史を眺めてみさえすればわかるのだが、この地上でもっとも先進的な国々は、想像を絶する破壊兵器を製造すると同時に、すさまじい暴力描写を氾濫させるメディア文化を発達させてきた。このような組み合わせが、私たちを蛮行と自己破壊へ向かわせないはずがあろうか。
(後略)→続きは凱風社ホームページへ。
【読者のみなさんへ】
日本語版の編集者と訳者の勧めを受け、著者である私、ロジャー・シャタッ
現代の科学技術は、人間が制御できないところまで「進歩」した。人間を時代遅れにするような「知識」をこのまま野放しにしてよいのだろうか。
内容説明
現代の不幸は「無知」からくるのではなく、「進歩しつづける知識」に起因する。
目次
第1章 禁断の知識とは何か(六つのカテゴリー;オカルト的知識)
第2章 爆発する知識(原子爆弾とゲノム;純粋科学と応用科学 ほか)
第3章 ポルノグラフィーと犯罪(禁断の作家―マルキ・ド・サド;マルキ・ド・サドの人物像 ほか)
第4章 スフィンクスとユニコーン(知るべきでない事柄;無知のヴェールと経験の炎)
著者等紹介
シャタック,ロジャー[Shattuck,Roger]
1923年ニューヨーク市生まれ。セント・ポール校とイェール大学で学ぶ。第二次世界大戦中は補給大隊のパイロットとして太平洋方面で従軍。ユネスコ(パリ)のフィルム・セクションに勤めたのち、ニューヨークに戻って出版・ジャーナリズム関連のさまざまな仕事に就くうち、ハーヴァード大学の準研究員に指名される。著者はこれまで、フランス文学とギリシア・ラテン古典文学の教授としてハーヴァード大学、テキサス大学オースティン校、ヴァージニア大学、ボストン大学で教壇に立ってきた。1987年、その著作活動に対してアメリカ科学芸術アカデミーから特別賞を授与された。1990年には、フランスのオルレアン大学から名誉博士号を授与されるとともに、アメリカ科学芸術アカデミー会員にも選ばれた。また文学研究者・批評家協会の発足にあたってはその設立に尽力し、1995年には同会会長にも選ばれている
柴田裕之[シバタヤスシ]
1959年東京生まれ。早稲田大学、Earlham College(米国)卒業。翻訳家。主な訳書に、M・シーゲル『ディマジオの奇跡』(宝島社)、H・E・ソールズベリー『ヒーローの輝く瞬間』(NHK出版)、W・ダルリンプル『精霊の街デリー』(凱風社)、B・ホワイト『ママは決心したよ!』(白水社)、J・ホークス『死、眠り、そして旅人』(彩流社)、N・バーリー『死のコスモロギー』(凱風社)N・バーリー『スタンフォード・ラフッルズ』(凱風社)、W・J・ベネット編著『不思議な翼』(実務教育出版)、J・カベロス著『Xファイルの科学』(バベル・プレス)
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