内容説明
ソ連史の、リアル。モスクワに生まれ、日本で育ち、粛清で父を失う―時代に翻弄された人生は、しかし、典型的なソ連人のそれでもあった。スターリン体制、独ソ戦、長い長い全体主義の時代…ソ連に生きること、の手触りを直に伝える回想録。
目次
第1部 人間形成(幸福な幼年時代;不安多き思春期;戦争の年月)
第2部 さまざまな出来事(調査票;個人調書;私たちは金色の太陽の下に生きている;叔父の墓碑;古いランプ;一九六七年のモスクワ、アルヒーポフ通り;民族の友好―あるいは、旧ソ連の民族紛争を引き起こしかねなかった事件について;ピツンダ、モスクワ、さらに至るところで…)
第3部 父のファイル
著者等紹介
ナギ,エルヴィン・アレクセエヴィチ[ナギ,エルヴィンアレクセエヴィチ]
1930年モスクワ生まれ。ソ連のタス通信の記者である父親の仕事の関係で、1931年から1937年まで日本で過ごす。ソ連帰国後、父アレクセイが「日本のスパイ」などの罪状で粛清。独ソ戦中、母ファーニャとともにシベリアに疎開。1955年、モスクワ・エネルギー大学を卒業し、1990年まで電気技師として働く。1994年、家族とともにドイツに移住。デュッセルドルフ在住
野中進[ノナカススム]
1967年神奈川県生まれ。埼玉大学教養学部教授。20世紀のロシア文学が専門(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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かっくん
1
作者は1930年にモスクワで生まれ、母親はウクライナにルーツを持つユダヤ人。父親はスターリンの大粛清で銃殺される。波瀾万丈な生い立ちなのだがこれがソ連のスタンダードな人生らしい・・・・ 重苦しい雰囲気の中で回想が進んでいく。読めば読むほど、多民族国家ソ連、ロシア、ウクライナの複雑さが伝わってくる。歴史が進みそして後退していく不思議な国である。2023/01/30
CHACK
1
最後の一行に「まだ、そうなってはいません」と呟いたことであった。今から21年前に書かれたものであるが、ロシアは今日も、当時とほぼ同じ意味で、何も改めてはいないと思う。2022/08/30
晴天
1
1930年代の日本で育ち、そしてソ連に帰国して暮らした著者の半生記、数奇でもあり、ソ連市民としてはおそらくよくある話でもある。日本では外国人、ましてやソ連市民は官憲に監視され、大人は国士気取りに暴力を振るわれたりもし、帰国後のソ連でも民族や家族の経歴で差別され、振る舞い、言語、持ち物などが危険を招来せぬよう魂をすり減らすように隠し通し、戦争中は親類が独軍に虐殺されるなど、重苦しさが常につきまとう。しかしそんな中でも危険を冒して手をさしのべる人々もおり、他愛もない楽しみもあり。ソ連市民の営み、興味深かった。2020/08/30
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