内容説明
太陽ガス(化学兵器)による都市壊滅と全体主義国家の出現を描いた『アダムとイヴ』、23世紀の理想郷「至福」を舞台に展開するアンチ・ユートピア劇『至福』の二作品と詳細な訳者解題、村田真一「あとがきブルガーコフ―演劇の巨匠」を収録。
著者等紹介
ブルガーコフ,ミハイル[ブルガーコフ,ミハイル] [Булгаков,Михаил]
1891‐1940年。ウクライナ出身のロシア語作家。キエフ大学医学部卒業後、医師となるが、1920年代前半にモスクワに上京後、作家・劇作家として創作活動を行った
村田真一[ムラタシンイチ]
東京外国語大学大学院修士課程修了。現在、上智大学外国語学部ロシア語学科教授、ウクライナ国立ポルタワ教育大学栄誉教授。専門はロシア演劇・ロシア文化論
大森雅子[オオモリマサコ]
ロシア国立人文大学大学院修了(Ph.D)。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。博士(学術)。東京大学非常勤講師、立教大学兼任講師。専門は20世紀ロシア文学・ロシア文化
佐藤貴之[サトウタカユキ]
上智大学外国語学部ロシア語学科卒業。東京外国語大学(修士号取得)を経て、ロシア国立人文大学で研究活動を行う。専門はソヴィエト文学史、日露文化交流史。現在、東京外国語大学、および上智大学非常勤講師(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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watershed
2
大量破壊兵器以後の生き残り世界と、タイムマシーンを扱っており、H.G.ウエルズと比較したくなる。大きな違いはウエルズの小説ではあっさり消滅する国家権力や、恋愛やスリルといった人間臭い感情が決して消えないこと。 ソ連社会の芸術家への検閲と弾圧にもめげす書かずにいられなかったのは、「安全な話のどこが面白い?ヤバイ話ほど書きたい。」という気持ちなのかな。演劇性、破壊的な笑い等も筒井康隆に通じる。2019/03/25
brzbb
1
検閲されるとわかっていても風刺をやめないブルガーコフ。彼にとって小説や戯曲を書くことは生活のためじゃなかったんだろう。検閲を通らなければお金にならず食べていけないわけで、それでも政権批判をやめなかったのは、それが作家である彼にとっての命でありすべてだったからだろう。そうでなければ、検閲にひっかかるとわかっていながらそういう作品を書き、それでもなんとか世に出そうと修正を繰り返したりはしない。彼の作品に出てくる、まわりにとんでもない混乱を生み出しながら、どうしてもそうせずにはいられない科学者たちみたいに。2022/05/02