内容説明
わずかな骨片から絶滅した生物の骨格を再現する古生物学者に倣って、著者はわずかな史料から古代信濃安曇族の興亡を、西は九州の磐井の乱、東は陸奥のエミシ制圧、そして中央は内膳司長官安曇・高橋の熾烈な権力闘争と関連させて、詳細かつ全体的に描き出す。
目次
第1部 安曇族はどこから来たか(安曇郡;どこから来たか;なぜやって来たか;安曇野への道)
第2部 安曇野の春(アヅミの漢字表記;エゴと安曇野;「アヅミ村」を探す;安曇野開拓のエピソード)
第3部 安曇野の秋(サケの話;内膳司の話;ホタカ村)
第4部 安曇族はどこへ消えたか(八面大王とは何者か;安曇族と仁科氏との対立構造;安曇継成の佐渡遠流;東北三十八年戦争と坂上田村麻呂;将兵の戦いと神々の戦い)
著者等紹介
坂本博[サカモトヒロシ]
1934福岡県戸畑市(現在北九州市戸畑区)に生まれる。1963京都大学大学院文学研究科西洋哲学史専攻博士課程単位取得退学。1963大阪大学文学部哲学哲学史第一講座助手、1965フランス政府給費留学生としてパリ大学留学、1967大阪大学併設医療技術短期大学部助教授(哲学)、1971信州大学教養部助教授(科学論)、1995信州大学繊維学部教授(感性工学)、2000定年退職、現在信州大学名誉教授
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感想・レビュー
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orangepelican
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安曇族には前から興味があったのですが、このような本があるとは知らず、松本駅で衝動買いしました。安曇族の歴史を巡る、ロマンのある説が展開され、読んでいて楽しかった。ですが、他者の説を蹴散らしながら、著者の説がごり押しで進んでいくという印象はぬぐえず。歴史学素人であり、理系の私は説得力をあまり感じられませんでした。点と点を線で結んでそれを延長する、ってのは外挿だと思うけど、自然科学研究では非常に精度がよくない推測法なんですよね。一つの説として割り切って読むのであれば、非常に面白い本なのは間違いないです。2016/07/20
坂城
0
説とか面白いとは思う、八面大王の読み方は目から鱗だった。他にも説を証明する為に色々な方面から調べているのはそれなりに興味深いが推測の部分も多いはずなのに矢鱈自分以外の意見全否定したりと(その否定の言い草が個人的に何故か気にくわない)、寧ろ一々あることなすこと細かいこと否定ばかりして読めば読むほどイライラしてくる。否定ばかりではなくただその説をこういう根拠に基づいて〜と書けばいいのではとつくづく思う。最後は結局物語オチ。この筆者の本と自分が合わない、こんな本は初めてだ。逆にある意味いい経験になった。2011/07/24
えー。
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地元の人間としてとても面白く読ませていただきました。昔の鬼退治が気がつけば政権の争いの絡んだ悲しい物語だったとは。ちょっとばかり中だるみがあって滞ってしまいましたが、謎が明かされる面白さを十分に味わいました。故有って九州から逃れて安曇野に、そしてまたそこで消えざるを得なかった安曇族。悲しい物語です。2008/12/04