内容説明
人間の自由、価値、人格の問題をめぐって、ベルクソン・シェーラーからブーバー・ヤスパースに至る主要な思想を、価値論的・実存論的に考察。
目次
第1章 ベルクソンと「開いた道徳」―「愛の飛躍」の本質について
第2章 ベルジャーエフの「創造の倫理」―ベルクソンとの比較考察
第3章 価値の層的構造―シェーラーとハルトマンの価値倫理学
第4章 近代道徳における価値の転倒―シェーラーのルサンチマン理論とニーチェ批判
第5章 哲学的人間学の理念―シェーラーの人間学とヤスパースの実存開明
第6章 ヤスパースの「交わりの哲学」―「実存的交わり」の倫理的意義
第7章 ブーバーの対話原理―「我‐汝哲学」について
第八章 フレッチャーの『状況倫理』研究―アガペー倫理のために
第9章 カント倫理学研究―人格性の原理と道徳法則
感想・レビュー
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チネモリ
3
「第九章 カント倫理学研究」読了。本稿は人間を英知的存在と同時に現象的存在であるというカントの人間観に立脚し議論を進めている。この二重性によって道徳法則に従いつつこの法則に尊敬の感情を我々は抱く。またこの感情は高揚をも含む。確かに道徳的によい行為をすれば我々は清々しい気持ちになることがある。一方よい行為ができなかったことへの後悔の感情が生じるときもある。ということは道徳法則に忠実に従うだけでなく単なる快不快の感情でもない独特の道徳感情が我々に備わっているということになるだろう。2018/01/05