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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
マエダ
96
本書は脳の入り組んだ溝に潜んでいる言葉を探し出し、その幾重にも重なった意味と形状を研究し、言葉を読むという行為の奥深い想像性について熟考することがテーマとなっている。英語、中国、日本語と使う言語によって脳の発達が変わってくるなど非常に興味深い内容となっていてタイトルのイカは個体差によって素早く泳げないイカの生き残る研究と読字障害とを結びつけていて斬新な発想はさすがである。2016/03/10
アナーキー靴下
60
図書館で偶然見つけ、ここのところ気になって仕方ない読み方の疑問が一挙に解決するのではと期待しすぎたのが良くなかったか、ちょっとガッカリ本だった。そもそも読書についてより言語認識の話が大半。読書中はサッカードという眼球運動で先読みしている、という話は期待した内容だったけど他はだいたい活性化する脳の場所とか子供の発達とか。文字の起源等の歴史話が一番面白かったかな、特に口承文化の古代ギリシャ人の驚くべき記憶力。読んだことのないプルーストと、いつか読もうと思いつつ忘れていた『ギルガメシュ叙事詩』が読みたくなった。2024/08/02
SOHSA
48
《図書館本》タイトルからもっと哲学的な本かと思っていたが、実際は読字と脳の発達に関する脳科学の本だった。今まで文字の発明とその発達については、単に歴史の中で必然的に話し言葉を記録するツールとして誕生したものものとしてしか認識していなかった。つまりは、話し言葉の副次的なものとしての文字或いは書き言葉という認識だった。しかし、本書を読んで、読字能力は本来人間という種族が遺伝的に有していたものではなく、複数の能力が併合して生まれたものであること、読字能力を得たことによって脳の発達に劇的な変化が生じたこと(→)2014/07/19
かんやん
43
読むことは遺伝子にプログラミングされているわけではなく、脳の諸領域に新たな回路が生まれることで可能になる。つまり、一から学ばなければならない。学習によって文字を認識→解読→読解するに至る過程の脳をイメージ化して説明してくれるのだが、面白いのは言語によって、使っている領域がちがうというところ。したがって、ディスレクシア(読字障害)も、言語によって発現の仕方が異なる。また、古典的なディスレクシアの場合、通常とは逆に脳の右半球を機能代償的に使用している。アインシュタインもディスレクシアだったらしい。2018/11/04
サアベドラ
35
読むという行為について、ヒトの脳の進化と個人の読字能力の獲得(と失敗)の両面から考えるポピュラー・サイエンス。著者はディスレクシアの子供を持つ研究者。文字を読む、文章を読解するという行為は、本来別の目的で発達した複数の脳の部位を総動員して行われる行為で、後天的に学習により獲得される能力であるという。ディスレクシアの要因は非常に複雑で、完全には解明されていない。日本は一応識字率100%ということになっているが、学習障害が認知されたのはつい最近なので、実際には多くの人が無自覚に苦しんでいるのではないかと思う。2020/04/04
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