内容説明
2020年フローレンス・ナイチンゲール生誕200年。苦悩と幾多の挫折を乗りこえながら近代看護の基礎をつくり、看護・福祉・保健・衛生にかかわる改革を果たした勇気と行動力の人・ナイチンゲールの生涯を戦後日本の看護の発展に貢献してきた著者が描く。中学生から読める。
目次
第1章 少女ナイチンゲール
第2章 夢と現実
第3章 看護の道へ
第4章 看護と戦争
第5章 ナイチンゲールが残したもの
第6章 ナイチンゲールが語り継がれる理由
著者等紹介
川嶋みどり[カワシマミドリ]
日本赤十字看護大学名誉教授。1931年、京城(現ソウル)で生まれる。1951年に日本赤十字女子専門学校を卒業し、日本赤十字社中央病院耳鼻科外来係長などを経て、2003年に日本赤十字看護大学教授を定年退任し、現職。現在、健和会臨床看護学研究所所長、一般社団法人日本て・あーて“TE・ARTE”推進協会代表を兼務し、看護ケアの原点に立ち返る看護の普及・教育に務める。おもな受賞歴に、毎日新聞創刊100年記念「日本の選択」毎日・日本研究賞(共同研究、1971年)、若月賞(1995年)、第41回フローレンス・ナイチンゲール記章(2007年)、第1回山上の光賞(2015年)など(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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えすてい
6
著者の看護師になって駆け出しの頃のエピソードが書かれている。全身が真っ黒な垢で覆われた小児がんの少女。この少女の垢を少しずつ拭っていき少女が笑顔になったことで著者は初めて「看護を発見した」。その後初めてナイチンゲールの看護覚え書を読み、自分のあの少女にしたことと同じことが書かれていた。来年生誕200年の5月12日を迎えるに当たり現代の科学や医療技術や環境問題が横たわる中でナイチンゲールの思想は現代にこそ通じそこは古さも新しさもない。それに応えて来年YESと言えるかどうかの総括がこの本の最大のテーマである。2019/06/07
えすてい
6
来年5月12日はナイチンゲールの生誕200年である。それを前に、看護学の第一人者として、読者にもナイチンゲールとともに考える「看護と平和の本」である。著者は戦争を経験した世代であり、戦争は断固反対と述べている。それは戦時中の日赤従軍看護師の悲惨な実態と併せてその理由が述べられている。ナイチンゲールの戦争観はリン・マクドナルド「実像のナイチンゲール」から引用している(私はこの本は決してあまり高く評価はしてないが)。人が健康に生きていくためには戦争はあってはならないことを著者はナイチンゲールとともに力説する。2019/06/07
robauma
2
藤田和日郎「ゴースト・アンド・レディ」を再読して、やっぱり面白いと思うと同時にフロレンス・ナイチンゲールがどのような人であったかもう少し詳しく知りたくなった。 この本には彼女がどのような人であったか書き記してくれている。 とても合理的な思考を有し完璧主義であり、人と関わる事にも好きだったのだろうと思う。 発想、観察力、分析、行動力、に加えて戦略性もある。凄い方だ。 「如何なる献身も自己犠牲も、組織化されない限り無益であることを彼女は看取していた」2024/06/06
かたばみ
2
ナイチンゲールの伝記は小学生の時に読んで以来かな。滅私奉公の人。というイメージだったけれど、全く違う。合理的で人権(自分を含む)を大事にしている人だったんだ。看護婦の職業が卑しいとううイメージの時代、自身が設立した看護学校では、先進的な学びと実践に加えて、充分な金銭手当も支給した。すごいなあ。もちろん、実家がとてつもなく裕福で人的ネットワークも広いということもおおきいんだろうけど。実家での猛反対のなか、自身を研鑽しあきらめずに道を進んだことでそのバックボーンが生かされ、今に繋がっているんだな。2019/07/05
Mate
1
彼女がいかに強く、誠実で、苦しむ人々に心を寄せていたのがとても分かりやすく描かれている。 筆者の体験も含めて看護がどういったものであるか、スキルと心(患者に向き合う姿勢)が求められるプロフェッショナルなものでなければならないことが真っ直ぐに伝わってきて、胸を打たれた。 たった一人の女性の行動で、これだけ人類に貢献出来るという事実自体が、今を生きる私たちを勇気づけてくれる。2023/05/01