内容説明
本書は、2023年11月2日に京都でおこなわれた国際シンポジウムの記録を元にしたものである。ビオン研究の第一人者として知られるベルギーの精神分析家ルディ・ヴェルモート氏と日本の精神分析家松木邦裕氏、そして哲学者西平直氏という三者の貴重な鼎談に、西見奈子氏、清野百合氏の論考が加わり、さらに充実した内容となった。そこでは「無」から見た精神分析諸概念の再解釈と実際の治療への応用、そして、独創的な認識論的精神分析から存在論、あるいは超越論と帰納法的アプローチへと転換したビオンの臨床の心髄が明解に論じられる。そして、そこから分析患者のこころの真実を見出す実践的な技法とその哲学的背景についての論考が展開されている。難解さで知られる「後期ビオンの理論」と宗教・哲学を架橋し、精神分析治療の実践に役立てるための試みといえよう。
目次
第1章 後期ビオンの精神分析技法と東洋哲学、とりわけ無心に注目して―Late Bion’s psychoanalytic technique and its relation to Asian philosophy,especially Mushin(no‐mind).
第2章 精神分析技法における直観と無心
第3章 「無」から見た精神分析諸概念の再解釈
第4章 ビオンの「O」と禅の「無」
第5章 西平先生の討論への応答
第6章 破局について、あるいは、はぐれた思考―西平論考「ビオンの「O」と禅の「無」」への応答
第7章 さまよえる思考を宿す―後期ビオンの「後期」と禅的思想の重なり
第8章 失われしもの―精神分析と宗教の関係を考える
著者等紹介
松木邦裕[マツキクニヒロ]
1950年佐賀市生まれ。熊本大学医学部卒業。2009年~2016年京都大学大学院教育学研究科教授。精神分析個人開業。日本精神分析協会正会員。京都大学名誉教授
西見奈子[ニシミナコ]
1978年鹿児島県生まれ。2001年九州大学教育学部卒業。現在、京都大学大学院教育学研究科准教授。専攻精神分析、精神分析史
ヴェルモート,ルディ[ヴェルモート,ルディ] [Vermote,Rudi]
医学博士、ベルギー精神分析協会元会長、同協会訓練分析家、ルーヴェン大学精神医学名誉教授、国際精神分析誌編集委員、国際精神分析協会提携センター・アウトリーチ委員会委員長、台湾精神分析スタディ・グループ・アドバイザー、カリフォルニア精神分析センター名誉会員。テルアビブのウィニコット・センターで教鞭をとる。2018年京都大学客員教授
西平直[ニシヒラタダシ]
信州大学、東京都立大学、東京大学でドイツ哲学と教育哲学を学んだ後、立教大学に7年、東京大学に10年勤務し、2007年から京都大学大学院教育学研究科教授。専門は、教育人間学、死生学、哲学
清野百合[セイノユリ]
1999年京都大学医学部卒。精神科医。臨床心理士。2018年日本精神分析学会奨励賞(山村賞)受賞。日本精神分析協会候補生。現在、勝田クリニック勤務および個人開業(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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