内容説明
本書は、心理療法の失敗とその後の治療関係の立て直しについて、実践と理論の両面から検討された臨床・研究成果をまとめたオリジナリティ溢れる一書である。心理療法は失敗する。多少にかかわらず、方法を誤っていたり、要望を汲み取れなかったり、何気ないコメントが小さなトゲのようにクライエントを傷つけてしまったりし、二人のあいだに誤解が生まれてゆく。そのままだと、やがては、セラピストとクライエントの関係が壊れてしまうことにもなりかねない。多くの臨床家は、一度ならずそうした経験をすることだろう。そうしたさまざまな失敗について、その原因と回避、失敗に陥った後の解決法などを追及していくことで、セラピストは、セラピーの場で人と人が出会うということへの深い思索を与えられ、心理療法に対する新たな世界観の提言に勇気づけられる。本書を読むことで、セラピストは、心理療法の底流となる「基本となるもの」に気づかされるに違いない。
目次
第1部 治療的失敗の理解の基礎(心理療法と失敗;治療的失敗の効果研究とプロセス研究)
第2部 失敗の分類とその事例(セラピストの欲求;セラピストとクライエントの恥の感情;ミスマッチ;原初的傷つきやすさ)
第3部 失敗への対処とセルフケア(治療的失敗を防ぎ、失敗から学ぶ)
補論(スーパーヴィジョンにおける恥―失敗・修復・成長;臨床的判断の鍛え方)
著者等紹介
岩壁茂[イワカベシゲル]
立命館大学総合心理学部教授。早稲田大学政治経済学部卒業、McGill大学大学院カウンセリング心理学専攻博士課程修了(Ph.D.)。札幌学院大学人文学部助教授、お茶の水女子大学・基幹研究院・教授を歴任後、2022年4月より現職。研究領域は、「人はどのように変わるのか」というテーマをもとに、感情に焦点を当てた心理療法のプロセスと効果研究を行っている。臨床家の訓練と成長、心理療法統合などのテーマにも関心をもつ(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。