内容説明
1968年という年はW.R.ビオンにとって人生の一つの節目といえる。本書は、ビオンが英国から米国へ移住したその夏に行ったブエノスアイレスでのセミナーシリーズの記録である。本書の構成は、講義形式のセミナー、ケースプレゼンテーション、スーパーヴィジョンの3部となっている。貴重なビオン自身によるケースプレゼンテーションが収録されている点は、本書の最大の特徴であり、ビオンのなまの臨床を読者は目の当たりにするであろう。また詳細なスーパーヴィジョンの記録によっても、ビオンの臨床姿勢を存分に味わうことができる。講義形式の語りの中では逆転移、投影同一化など分析家に広く馴染のある概念から、コンテイナー/コンテインド理論、グリッド、「記憶なく欲望なく」などのビオン独自の概念までがわかりやすく解説されている。難解と言われるビオンの多くの著作に比して、本書の中の彼は、聞き手を前にして自身の言葉がわかりやすく届くよう心を配っているように感じられる。セミナー参加者とビオンとの豊富な質疑応答も、読者がビオンの概念をより深く理解するために役立つだろう。
目次
第1部 ビオンの臨床セミナー
第2部 ビオン自身による分析症例の提示
第3部 ビオンによるホラシオ・エチゴーエンへのスーパーヴィジョン
第4部 その他のアルゼンチン分析家に対するビオンの更なるスーパーヴィジョン
第5部 スーパーヴィジョンにおける問いをめぐる、ビオンと参加者との対話
著者等紹介
松木邦裕[マツキクニヒロ]
1950年佐賀市生まれ。熊本大学医学部卒。2009年~2016年京都大学大学院教育学研究科教授。精神分析個人開業。日本精神分析協会正会員。京都大学名誉教授
清野百合[セイノユリ]
1999年京都大学医学部卒。精神科医。精神保健指定医。日本精神分析学会認定精神療法医スーパーバイザー。日本精神分析協会候補生。現在、精神科クリニックに勤務し精神科臨床に従事するかたわら、精神療法室個人開業(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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