出版社内容情報
「当事者研究」と多様なフィールドの専門知とのコール・アンド・レスポンスが生み出す、生き延びるための知の再編成の試み。当事者の日々と世界は「こまったこと」にあふれている。そして、そのたびごとに創意工夫で「こまったこと」に対処していく。「こまったこと」への対処という経験から、人は「当事者になる」。このプロセスにおいて、それぞれの当事者は固有の「知」を獲得していく。一人一人の個人から生み出される知でもあり、仲間と共同制作する知でもあるそれは、当事者(たち)の唯一無二の「経験?アクション?関係」から生まれた実践知として、共有され、継承される。一方、必ずしも当事者とオーバーラップするとは限らない専門家=研究者による専門知は、当事者による実践知との同心円を描かず、また当事者ニーズから乖離しうるだけでなく、時にパターナリスティックな動機によってこれを疎外することさえある。
では、いかにして「専門知」は当事者による「実践知」へと寄与できるのか――これが本特集を貫くリサーチクエスチョンとなる。このリサーチクエスチョンを解明するべく、「言いっぱなし聞きっぱなしの当事者研究会議」を通じて、これまで交わることの少なかった各分野の当事者が、互いの領域で共有・継承されてきた「実践知」を紹介し合い、それと同時に、残された問いを示しつつ、現時点での回答を専門家にオーダーする。「いっしょにつくる当事者共同研究」では、オーダーを受諾した専門家が、編集会議の問いに答える形で自らの専門知を開示し、それでもなお残る問いを返していく。
医療・保健・福祉領域における静かなる革命、当事者研究と、各分野の専門知とのコールアンドレスポンスが生み出す、生き延びるための知の再編成の試み。
1 みんなでつくる当事者研究
知の共同創造のための方法論
熊谷晋一郎
2 言いっぱなし聞きっぱなしの「当事者研究会議」
座談会
言いっぱなし聞きっぱなしの「当事者研究会議」
[司会]熊谷晋一郎/秋元恵一郎・綾屋紗月・楳原節子・上岡陽江・倉田めば・白井誠一朗・美郷・山根耕平
3 いっしょにつくる当事者共同研究
1?遺産継承
対談
継承すべき系譜?―運動
熊谷晋一郎・尾上浩二
座談会
世代間継承?―身体障害・難病篇
[司会]熊谷晋一郎/川合千那未・川?良太・白井誠一朗・廣田喜春
継承すべき系譜?―自助グループ
野口裕二
座談会
世代間継承?―自助グループ編
秋元恵一郎・楳原節子・上岡陽江・熊谷晋一郎・倉田めば・美郷
2?スティグマ
多重スティグマ?―精神障害と恥
樫原 潤・石垣琢麿
多重スティグマ?―依存症・セクシュアリティ・HIV/AIDS
新ヶ江章友
多重スティグマ?―依存症者の子育てとスティグマ
熊谷晋一郎
医療者の内なるスティグマ―知の再配置の試みから
熊倉陽介
差別されない権利と依存症
木村草太
3?当事者性と専門性/当事者性の専門性
専門家と当事者の境界
信田さよ子
ピアワーカーの政治(politics)
松田博幸
アカデミズムと当事者ポジション
上野千鶴子
4?回復―言葉・集団・健康の視点から
ハームリダクションのダークサイドに関する社会学的考察・序説
平井秀幸
言葉と組織と回復―当事者研究・自助グループと対話
大嶋栄子
「ゆるゆる組織」のエビデンス―当事者運営組織と高信頼性組織研究
中西 晶
食生活と回復のメカニズム―精神栄養学の立場から
功刀 浩
4 「いっしょにつくる当事者共同研究」のその後
「知の共同創造と再配置」のための編集後記―「当事者共同研究」への応答
熊谷晋一郎
熊谷晋一郎[クマガイシンイチロウ]
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