内容説明
人々の声がポリフォニックに共鳴し、身体と身体が接続し、新たな物語が生まれては消える臨床のリアリティは、たえず新しい概念を創発しなければ追跡することができない。精神医学概念の普遍妥当性への疑義、文化精神医学における多元的身体性、沖縄の医介輔とスピリチュアリティ、水俣病とソーシャル・サファリング、精神科臨床と老い、そして回復の可能性としてのレジリアンスへ。臨床というフィールドの多元性を素描する、精神医学と人類学の邂逅から生まれたラディカルな思考。
目次
序論 ためらいの普遍性―精神医学概念はあらゆる社会において普遍妥当性をもつのか
第1部 文化精神医学―多元的身体性と「場」(文化と伝統療法;多元性・多声性・身体性;風土的視点と精神科臨床「臨床場」の問題;文化精神医学と風土・民族・宗教)
第2部 スピリチュアリティ―沖縄と「魂」(宗教性と臨床性―多元性とケアの現実;沖縄の医介輔の歴史と語り)
第3章 ソーシャル・サファリング―水俣と「傷」(ソーシャル・サファリング;「水俣病」研究の方法論再考―医学的思考の新たなパラダイム転換)
第4部 関係性の詩学―精神科臨床と「老い」(「世に棲む老い人」の臨床人類学―“関係性の詩学”の人類学に向けて;風土と老人観―医療人類学的視点から)
第5部 レジリアンス―傷から回復へ(レジリアンス・病い・文化―レジリアンスの医療人類学;精神医療における「リカバリー」を再考する)
著者等紹介
下地明友[シモジアキトモ]
熊本学園大学大学院社会福祉学研究科福祉環境学専攻教授、医学博士。1973年熊本大学医学部卒業、1981年熊本大学神経精神医学講座助手、1987年沖縄県立宮古病院精神科医長、1993年熊本大学神経精神医学講師、1997年熊本大学神経精神医学助教授、2005年より現職(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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