内容説明
木村敏、中井久夫に師事し、境界性パーソナリティ障害と寡症状性統合失調症の研究をはじめ、自己愛性パーソナリティ障害、躁うつ病、解離性障害の臨床精神病理学についての卓越した論文や、名著『境界事象と精神医学』(岩波書店)でも知られる鈴木茂の第三論文集。緻密な思考によって構成化され、魅力的な独自の見解が随所に見られる精神病理学論文と、DSM‐3以降の現在の操作的な臨床への疑義から「症例記述の復権」を目指して構想した論考15編と木村敏の序言を収める。臨床家の立場から新たな時代への精神病理学の可能性を探り、時代による精神疾患の病像変化を読み解くための画期的な試み。
目次
1 解離機制や外傷記憶がパーソナリティ特性と化した症例(解離をどう理解しどう治療するか;解離現象・解離性障害への懐疑;青年期の外傷的記憶を想起する境界例成人に対する形式操作的アプローチ;PTSD概念の整理・再検討)
2 発達過程・病の体験・環境との関わりから形成される特異なパーソナリティの症例(子どもの強迫症状と統合失調症;人格からみた病の意味;パーソナリティ概念の生活史的・環境的基礎;セキュリティ・システムとしての家族)
3 パーソナリティに問題のある(躁)うつ病の症例(職場に見られるパーソナリティ障害1―躁うつ病に関連したパーソナリティ障害について;職場に見られるパーソナリティ障害2―境界性・自己愛性パーソナリティと解離性障害について)
4 精神医学の若干の概念(精神病理学的に内因をどうとらえるか;臨床的方法としてみた記述と了解概念―Karl Jaspers批判;幻覚の記述現象学;境界性パーソナリティ障害などのパーソナリティ障害―時代による精神疾患の病像変化)
5 絶筆と追悼(精神病理学は精神療法に寄与しうるか?―境界例との関わりを通して;追悼・鈴木茂先生)
著者等紹介
生田孝[イクタタカシ]
医学博士、理学博士。1949年北海道小樽市生まれ。1972年大阪大学理学部物理学科卒業。1977年名古屋大学大学院理学研究科博士課程(理論物理学専攻)修了。1981年大阪大学医学部医学科卒業。1982年名古屋市立大学医学部精神医学教室に入局。木村敏、清水將之両先生に師事。1991~92年ドイツ・マールブルク大学医学部精神医学教室ブランケンブルク教授のもとに留学。1995年~総合病院聖隷浜松病院精神科部長、2015年~同病院顧問(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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