内容説明
この本は、心理療法の失敗と、その後の治療関係の立て直しについて、実践と理論の両面から検討された臨床・研究成果をまとめたオリジナリティ溢れる一書である。心理療法は失敗する。多少にかかわらず、方法を誤っていたり、要望を汲み取れなかったり、何気ないコメントが小さなトゲのようにクライエントを傷つけてしまったりし、二人のあいだに誤解が生まれてゆく。そのままだと、やがては、セラピストとクライエントの関係が壊れてしまうことにもなりかねない。多くの臨床家は、そうした経験を一度でもすることだろう。本書は、そうしたさまざまな失敗について、その原因と回避、失敗に陥った後の解決法などを考えたものであり、セラピーの場で人と人が出会うということへの深い思索と、心理療法に対する新たな世界観の提言に、読者は勇気づけられるはずである。そして、心理療法の底流となる「基本となるもの」に気づかされるに違いない。心理療法の世界は、新しい時代に入ろうとしており、本書はその道標となるものである。
目次
第1部 治療的失敗の理解の基礎(心理療法と失敗;治療的失敗の効果研究とプロセス研究)
第2部 失敗の分類とその事例(セラピストの欲求;セラピストとクライエントの恥の感情;ミスマッチ;原初的傷つきやすさ)
第3部 失敗への対処とセルフケア(治療的失敗を防ぎ、失敗から学ぶ)
著者等紹介
岩壁茂[イワカベシゲル]
お茶の水女子大学大学院人間文化創成科学研究科准教授、臨床心理士、心理学博士。神奈川県横浜市出身。早稲田大学政治経済学部卒業後、McGill大学心理学部に編入学し、同大学大学院カウンセリング心理学専攻博士課程修了。博士課程在学中に、McGill大学大学院では非常勤講師として、モントリオール総合病院精神科心理部門でインターンとして勤務し、McGill大学心理教育クリニックのカウンセラーも務める。2000年に札幌学院大学人文学部専任講師として着任。2004年3月よりお茶の水女子大学大学院人間文化研究科助教授。専門分野は、心理療法のプロセス研究で、「人はどのように変わるのか」という変容プロセスに関する研究とプロセス研究に基づいた臨床指導を行っている。研究テーマは、セラピストの困難、心理療法における感情の変化、心理療法統合、臨床家の職業的成長と訓練。プロセス研究の視点が広がるように、そして面接プロセスに関するオープンな議論が活性化されるように心理療法のビデオ教材の翻訳にも力を入れる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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