内容説明
心理療法の営みは、時代を超えて普遍的なものであると同時に、常に発展している。本書は、これほど多様な心理療法の学派のいずれもが効果的である理由は何なのか、すなわち心理療法が共有する有効成分は何なのかという、心理療法における永遠のテーマを扱った労作である。現代の主要な心理療法のみならず、シャーマニズム、聖地への巡礼、信仰復興運動、カルトによるマインド・コントロール、思想改造、プラシーボ投与など、幅広い範囲の治療的・説得的活動が検討される。著者は、このように大きなスケールで心理療法を捉え、それらに共有される共通の治療要因を探究していく。その上で、心理療法実践への示唆として、治療者は学派にこだわらず、患者のパーソナリティや価値観や期待に合わせて、どのような技法でも用いるべきだと述べている。本書は近年注目を集める「心理療法の統合」を導いてきた重要な著作でもある。本書においては、心理的プロセスと身体的プロセスの相互作用にも相当の注意が払われており、身体疾患に対する心理的な治療についても多くの紙数を割いて考察されている。さらに、心理療法は科学よりもレトリックに近縁のものであるという見方が提示され、その斬新な心理療法観はこの領域に重要な議論を刺激するものとなっている。英語圏で版を重ねる名著の待望の邦訳。
目次
現代アメリカにおける心理療法
心理療法についての概念的枠組み
意味の変容としての心理療法
信仰復興運動とカルト
身体的な病に対する宗教的魔術的な治療
心理療法における心と身体
医療と心理療法におけるプラシーボ反応と期待の役割
心理療法家と患者
喚起的個人心理療法
指示的な個人心理療法
グループ療法と個人心理療法
統制された環境における心理療法
著者等紹介
フランク,ジェローム・D.[フランク,ジェロームD.][Frank,Jerome D.]
哲学博士、医学博士。ハーバード大学(アメリカ)とベルリン大学(ドイツ)で心理学の訓練を受けた後、ハーバード大学とニューヨーク病院で医学の訓練を受ける。その後、ジョンズ・ホプキンス医学校とジョンズ・ホプキンス病院の精神科スタッフに加わり、合衆国陸軍医師団で過ごした3年間と合衆国退役軍人局で過ごした3年間を除いて、現在に至るまでそこに所属する。約250本の論文と5冊の書籍の著者ないしは共著者。妻であり精神保健カウンセラーであるエリザベスと共にバルチモアに住んでいる
フランク,ジュリア・B.[フランク,ジュリアB.][Frank,Julia B.]
医学博士。社会的研究でハーバード大学から学士号を得た後、エール医科大学で医学の学位を得る。内科でインターン実習を受けた後、精神科で研修を終え、その後,エール医科大学で診断評価についての研究員となる。エール医科大学の精神科医を5年間務めた後、ウエスト・ヘヴン退役軍人医療センターの病棟主任医師となる。これまでに、軽妙でユーモラスな詩、医療と精神医学の歴史に関する論文、アルツハイマー病に冒された若者に向けた本、心的外傷後ストレス障害の薬物療法についての論文、などを出版してきた。夫のマーク・ガーバーとともに、テキサス州のオースティンに住み、テキサス大学の学生精神保健に関わっている。現在、3人の娘を育てるため、アカデミックな経歴からは一時的に退いている
杉原保史[スギハラヤスシ]
京都大学カウンセリングセンター教授、京都大学博士(教育学)、臨床心理士。1989年京都大学大学院教育学研究科博士後期課程単位取得退学。大谷大学文学部専任講師、京都大学保健管理センター講師、京都大学カウンセリングセンター講師を経て、2007年より現職(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
-
- 和書
- 王朝物語のしぐさとことば