内容説明
セラピストは、クライエントになる子どもと出会うとき、どんなことを考え、どんなことを感じるのだろうか。本書は、5年間におよぶ、ある少年との心理療法のプロセスを治療者とクライエントの心の通いあいを軸に克明にたどったものである。精神分析的心理療法を治療基盤とする著者は、アンナ・フロイト、クライン、スターン、ウィニコット、ストロロウらの理論と技法を援用しつつ、日常臨床における具体的な知見をわかりやすく解説している。本書を読むことによって読者は、精神分析的心理療法と遊戯療法の基本を身につけられるとともに、クライエント・セラピスト関係における情動の相互作用という考察から、一つの観点にとらわれない本質的な感覚、学派を越えた普遍的な心理療法の治療機序についても理解を深めることができる。
目次
序章 出会いまで―子どもを迎える準備
第1章 心理的に安全な空間づくり―初回面接
第2章 心の通いあいの芽生え―週1回の心理療法開始
第3章 臨床的理解と方針―発達的観点に基づいたアセスメント
第4章 心理療法の展開―関係性の中に読みとる心の流れ
第5章 二人の間のストーリー―分離と再会
第6章 不在・喪失をめぐる情緒の交流―突然の終結に向かって
終章 心理療法の外の状況―そして、心理療法のその後
著者等紹介
森さち子[モリサチコ]
東京生まれ。1991年慶応義塾大学大学院社会学研究科修士課程修了。同大学医学部精神神経科学教室共同研究員。1993年同大学医学部精神神経科学教室助手(現職)。1995年臨床心理士取得。2000年日本精神分析学会認定心理療法士・スーパーバイザー取得。非常勤として、慶応義塾大学環境情報学部講師、同大学湘南藤沢キャンパスウェルネスセンターカウンセラー、慶応心理臨床セミナー・精神分析セミナー講師
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