出版社内容情報
《内容》 現在は,統合失調症や気分障害はもとより,従来その発症に心理的要因の関与が大きいとされていた不安障害などにおいても,その成り立ちから治療に至るまで生物学的要因への配慮がなければ適切な診断治療が円滑に施行されない時代を迎えている。とくに各種向精神薬が精神科治療の中心をなしている事実は,医療従事者に,薬物に対する正しい認識を求めているといえよう。
薬物の使用に際しては科学的な根拠に基くもの,すなわちエビデンスの確立したものが優先されねばならない。また,薬物療法を適切円滑に施行するためには,良好な治療者患者関係の樹立が何よりも重要であり,薬物療法を精神科治療体系の主要部分と位置づけ,精神療法をはじめとする他療法との円満な融合を心がける必要がある。
こうした視点から,本書では,現在わが国の精神科臨床で使用される薬物を中心に向精神薬について解説し,さらに,処方する際の心理的側面についても多くの頁を割いている。臨床心理士などのコメディカルの方々や精神薬理学が専門ではない臨床医のための,現場で必要とされる知識がコンパクトにまとめられた1冊である。
《目次》
序 文
第1章 向精神薬概説
1 向精神薬とは
2 向精神薬の分類
3 向精神薬自体の持つ特性
4 薬効に影響する諸要因
5 向精神薬の開発
6 その他
第2章 向精神薬と精神療法
はじめに
1 治療同盟
2 向精神薬に対する“憶測”
3 転移と逆転移
4 “移行対象”としての薬剤
5 臨床試験の精神療法的側面
6 薬物療法と特殊精神療法の併用
7 スプリット・トリートメント
おわりに
第3章 向精神薬処方における心理的側面・1
はじめに
1 処方に関する心理的問題
2 向精神薬の処方に関する心理的問題
3 処方の心理とプラセボ効果
まとめ
第4章 向精神薬処方における心理的側面・2――コンプライアンスからアドヒアランスへ向けて――
はじめに
1 コンプライアンスとは何か
2 ノンコンプライアンスによる問題
3 コンプライアンスの実態
4 アドヒアランスとは何か
5 アドヒアランス/コンプライアンスを得るために
おわりに
第5章 抗不安薬
はじめに
1 抗不安薬の歴史と分類
2 BZ系抗不安薬
3 タンドロスピン
4 SSRI
第6章 睡眠薬
はじめに
1 睡眠薬概要
2 不眠について
3 医師と患者の睡眠薬をめぐる心理的な交流
4 睡眠薬依存
おわりに
第7章 抗うつ薬
はじめに
1 薬理作用
2 歴史・分類
3 適応疾患
4 抗うつ薬の用い方
おわりに
第8章 気分安定薬
はじめに
1 気分安定薬の歴史
2 気分安定薬の適応
3 気分安定薬の副作用
4 薬物療法以外のアプローチ
おわりに
第9章 統合失調症の治療と抗精神病薬
はじめに
1 高次脳機能障害としての統合失調症
2 統合失調症の効果的な治療戦略
3 再発・再燃の予防と薬物療法
4 抗精神病薬による統合失調症の治療
5 非定型抗精神病薬の登場
6 非定型抗精神病薬を用いた統合失調症患者の治療
おわりに
第10章 抗てんかん薬
はじめに
1 抗てんかん薬開発の歴史
2 抗てんかん薬の作用機序および臨床効果(表2)
3 薬物療法の開始を決定するとき
4 てんかんに対する薬物療法の実際
5 抗てんかん薬の催奇性
6 薬物療法終了の選択
第11章 抗痴呆薬
はじめに
1 痴呆の症状と薬物療法
2 中核症状に対して
3 周辺症状に対して
おわりに
第12章 慢性疼痛に対する薬物療法
はじめに
1 診断・分類
2 症 状
3 治 療
4 薬物療法
おわりに
索 引
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