内容説明
クライエントの重要な一面を適切に理解していても、治療者がその理解を伝える中で、かえってクライエントを追いつめ傷つけてしまうことがある。そういう場合にも言い方を工夫すれば、同じ内容を治療的なやり方で伝えることが可能になることが多い。では治療的な言い回しと、非治療的な言い回しとを区別するものはいったい何なのだろうか。本書は、治療的なコメントが体現している諸原理を、豊富な具体例を示しながら明らかにしていく。こうした原理を理解し、その原理に沿ってコメントを形成する努力をたえず積み重ねることで、治療者の治療的コメント形成能力は高められていく。その能力は訓練によって獲得可能なスキルなのである。本書は、初心者にとっても経験者にとっても学ぶところの多い、名著と言うべき著作である。
目次
談話療法
循環的心理力動論(悪循環;不安への注目;洞察、治療関係、外的世界)
非難的コメントと促進的コメント:治療的な対話における非難と許し
治療者による問いかけ:治療は取り調べではない
患者の強さに依拠する
ありのままを認めることと変化を促進すること
帰属的コメントと暗示
リフレーミングとパラドックス
治療者の自己開示:有用性と落とし穴
実際の問題解決にまでもっていく:抵抗、徹底操作、フォロー・スルー
夫婦に対する治療的コミュニケーション
著者等紹介
ワクテル,ポール・L.[ワクテル,ポールL.][Wachtel,Paul L.]
1940年生まれ。コロンビア大学を卒業、エール大学大学院(臨床心理学専攻)において博士号を取得。その後、ニューヨーク大学において博士号取得後の精神分析訓練プログラムを修了。現在は、ニューヨーク市立大学(the City University of New York)ならびに大学院の教授(Distinguished Professer)
杉原保史[スギハラヤスシ]
1989年京都大学大学院教育学研究科博士後期課程単位取得退学。1990年大谷大学文学部専任講師。1996年京都大学保健管理センター講師。2000年京都大学カウンセリングセンター講師。2002年京都大学博士(教育学)
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