内容説明
本書は、現代精神医学から置き去りにされた患者の状況、病いと社会との生々しいかかわりを、分裂病犯罪という側面から実証的に分析することにより、司法犯罪精神医学を臨床精神医学における重要な臨床課題の一つとして確立せんとしたものである。分析の方法としては、実際の診療場面で得た印象や疑問から出発し、精神病理学、社会学、法律学のコンセプトを武器として論述を展開している。分裂病犯罪研究の歴史的概観に始まり、暴力の発動過程から、犯罪行動の状況論的な分析、責任能力論をめぐる動向、逸脱行動を続ける患者の治療と社会復帰、分裂病者に特有の社会的脆弱性、治療を妨げる要因や陥穽などさまざまなテーマにつき、多くの症例を示しながら詳述している。
目次
序章 分裂病犯罪の研究史―クレペリンから現代へ
暴力の精神病理
鑑定と責任能力
治療と社会復帰