内容説明
歴史は語る「墓のこちら側で希望を抱くな」だが、生涯で一度、待ち望まれた正義の津波が巻き起こり、希望と歴史が一致することがありうる。恨みや被害者意識、自己憐憫で心を閉ざすことなく、対話と和解の道を歩むピロクテテスを描いた劇作。
著者等紹介
小沢茂[オザワシゲル]
1977年名古屋市生まれ。2005年名古屋大学大学院文学研究科博士後期課程単位取得退学。現在、愛知淑徳大学講師(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
きゅー
8
ソポクレスの戯曲『ピロクテテス』をもとにした、シェイマス・ヒーニーによる戯曲。ここでは作品のストーリーについて触れないが、ソポクレスの書いたものをかなりなぞったもののようだ。大きく異なるのが物語の終わりの場面で、ソポクレスは、神となったヘラクレスを登場させ、ピロクテテスの意志を捻じ曲げている。いわゆる、機械仕掛けの神と呼ばれる演出だ。それに対してヒーニーは、ピロクテテスが怨恨を捨て、半ば自らの意志で決断するように改変している。ヘラクレスの登場は抑圧された無意識の表れだ、という解釈になるようだ。2022/04/28
Э0!P!
2
正義のために、「ギリシア人さえよければそれでいいという上官」に逆らうネオプトレモスの純真な心を忘れてはいけない。手段を選べるのであれば、選ぶべきであるし、最後まで高邁な心を忘れるべきでない。その真摯さは、ピロクテトスのような悲劇の主人公の苦しみを和らげ救うことが可能となるのである。2023/12/22