内容説明
われわれの戦いの相手は、現実の堕落した個人ではなく、権力を手にしている人間全般、彼らの権威、グローバルな秩序とそれを維持するイデオロギー的神秘化である。
目次
序章 「天にいる邪悪な諸霊」
第1章 否認―自由主義のユートピア
第2章 怒り―神学的・政治的なものの現実性
第3章 バーゲニング―経済学批判の帰還
第4章 抑鬱―ニューロン的心的外傷、あるいは、プロレタリアート的コギトの出現
第5章 受容―ふたたび獲得された大義
著者等紹介
山本耕一[ヤマモトコウイチ]
1950年東京生まれ。東京大学大学院修士課程修了。現在、駿河台大学教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
またの名
7
最近のジジェクは、調子に乗ってるかぶっ壊れてしまったんではないかと思わせるほど長大な作品をどんどん書き上げ過ぎ(オッカムの剃刀が来い)。本書全体は社会文化時評がメイン。急進的左翼の肩書の割に個別の政策に対してはひねくれた反動的にも見えかねないことを言うので、あげく論敵からファシストの反ユダヤ主義呼ばわりされる始末(p283)。しかし分析はとにかく冴えている。ラカニアンとしての本領が発揮されているのは、マラブーのトラウマ批判への応答。かなり面白い。翻訳もジジェクの中では一、二を争う読みやすさ。ただし長過ぎ。2013/06/11
0
再読。エリック・サティについて書かれているところは、ジジェク の中でいちばん好き。サティが何故フランス共産党に接近したのか、一般的には共産主義の音楽が「宣伝の歌と合唱」「誇大なカンタータ」と思われているが、むしろ、「背景からかたちを分離するギャップを転覆」する音楽、静寂の中に聴き取れない「背景」を浮かび上がらせるような音楽、それこそが、「英雄的個人」から「目につかない通常の人々のはかりしれない仕事や苦しみ」に目を向けさせる音楽における平等的共産主義の試みであったと言う。2023/09/19