内容説明
デレク・ジャーマン最期の著書『derek jarman’s garden』。152点の美しく鮮やかな写真とデレク・ジャーマン自身がつづる穏やかで幸せな日々。イギリスの片田舎、ダンジュネスの庭で静かに過ごした彼の素顔に出逢えるこの一冊、待望の日本語版。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
jam
51
’94年にエイズで逝去した映画監督デレク・ジャーマンは感染が判った後、ロンドン郊外のダンジェネスという村にある漁師小屋を終の住処とした。強い陽射しと吹き付ける潮風は植物にとって過酷な、荒涼とした土地である。この本は、裏庭に植えた1本のバラから始まった、デレクの庭作りの日々を綴る。「庭の塀は地平線だ」と語った庭は、石が散在し、浜で拾った瓦礫から野生の植物が伸びる。近くの原子力発電所の風景さえ庭の一部と見立て「巨大な客船」と呼んだ。死の傍らに佇みながら造る荒野の庭は、デレクの心象風景そのままでは無かったか。2016/04/24
アキ・ラメーテ@家捨亭半為飯
42
デレク・ジャーマンの庭について、以前、雑誌でちらりと写真を見て、荒野のような場所にふさわしい庭とポツリと立つ小屋に惹かれたことがあった。海のそばで風が強く、庭からは原子力発電所が見える。荒れた場所に感じられるそんなところが、なぜか不思議なあたたかさを見せる。デレク自身が海から拾って来た流木が何本も突き立てられ、自作のミニストーンサークルや野生に近い草花が茂っている。晩年のデレクはこの庭でしあわせだったに違いない。2016/10/12
しまこ
3
イギリスの映画監督デレク・ジャーマンが晩年を過ごした家の写真集。 原子力発電所のほど近く、荒涼とした風景の中に建つ真っ黒な家、窓枠は黄色。家を取り囲む庭はデレクの手によって岩と植物で彩られている。 この世の終わりのような、不思議な風景。奇妙で、寂しくて、とても美しい。 いつかこの庭に行きたい、ここで風にふかれたらずいぶん幸せな気持ちになるだろうなと思いながら頁を繰りました。 子どもの頃、初めてムーミンシリーズを読んだ時のような読後感。2015/05/15
ヒトコ
3
映画監督である著者が、英国ケント州ダンジェネスの原子力発電所に面した原野に造った庭を記録した写真集。文章はジャーマン、写真はハワード・スーリー。日本の庭園が美の基準である私にこの庭の美しさはよくわからない。しかし、プロスペクト・コテージと庭の植物たち、人も含めた生き者たち、造園の道具たちや謎のオブジェ(?)たち、全てが何やら可愛らしい。「パラダイス」という言葉は古代ペルシャ語「緑の地」から来ているそうで、ジャーマンはこの庭を私の「パラダイス」と呼ぶ。その愛しさはとても良く伝わって来る。図書館。2015/04/19
1039kuri
3
もう何年も前に、深夜近くの青山ブックセンターのセールで購入していました。当時は、あんな時間に本が買えるって、新鮮な感じでした。 原発近くに位置するデレク・ジャーマンの晩年の家と庭の写真は、何とも言えない空気感を醸し出していて、好き/嫌いの以前に、どうにも気にかかるものでした。最近、青井秋さんのコミックを読んで、なんということなく既視感を覚え、再読してみました。作品の纏う空気が似ているのかなあ。でもまだなんとなく釈然としない気分のままです。