内容説明
身体文化に内在する抑圧を、内側から描き出す。夏の風物詩、健康的なライフスタイルを表現する効果的な記号として用いられてきたサーフィン。東京2020オリンピックの正式競技になり現実的なスポーツ種目としても注目を集めるサーフィンという身体文化の世界を、いちサーファーが葛藤とともに活動した記録から写し出す。
目次
第1部 サーフィンのエスノグラフィーのために(サーフィン、スポーツ、ジェンダー;経験を記録する)
第2部 “女性”が経験するサーフィン(サーフィンを始める;男同士の絆;差異化戦略とその限界)
第3部 オルタナティブなゴールに向けて(ショップをこえて;サーフィンの再開;理想の空間をめざして)
著者等紹介
水野英莉[ミズノエリ]
1971年生まれ。京都大学大学院文学研究科博士課程単位取得認定退学、博士(文学)。専攻は社会学、ジェンダー・スタディーズ。現在、流通科学大学人間社会学部准教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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くさてる
12
サーフィンにはまったく興味がないけれど、なにかにハマる人には興味がある。そんな思いで手に取った一冊。サーフィンという文化の解説から、日本での受け止められ方、実際のサーファーたちの生活、「白人、健康、ヘテロ、男性」がメインのサーファーの世界での女性の立ち位置、それをエスノグラフィーという手法で分析し研究していく過程がコンパクトに分かりやすくまとめられていて、読み応えがあった。面白かったです。2021/01/07
ひつまぶし
3
著者自身がサーファーとして参与観察を行なった研究の成果というので読んでみた。第1章、第2章でサーフィンにまつわる権力性、オートエスノグラフィーの意義を整理するまでは良いが、これらを議論に活かすには章立てがまだ甘い。第3章以降のエピソードも面白くないわけではないのだが、女性としてサーフィンをする際の困難ばかり際立っていて、では一体何がサーフィンの魅力なのかがわからない。章構成に波乗りそのものの魅力や技術面の考察など、基本的な分析も盛り込まないと、権力性や自己を織り込んだ議論の展開がもう一つ面白味に欠ける。2021/08/11
原玉幸子
2
ウィンドサーフィンは「擬き」でやったことがありますが、スケボーもスノボーも経験がないので、私にサーフィンを語る資格は全くありません。偏見感覚的に、海とサーフィンと言えば、小麦色に焼けた肌の豊満な女性の明るい色の小さなサイズの水着姿、ストイックなスポーツというよりはラテン系のノリを連想してしまうのですが、斯かる先入観が全てで、その世界に就いて語られている言語も感性も、ジェンダー問題としての、(今迄用語自体を知らなかった)「エスノグラフィー」そのものでした。成程なぁ、です。(◎2020年・秋)2020/08/07
R
0
この本を元に、サーフィンのジェンダー観を考える卒業論文を執筆しました。まだまだサーフィンも他のスポーツも男性優位の構造が成り立っています。そして性別による差別も少なくありません。 大学生1人の卒論で世の中が変わることはありませんが、今後サーフィン、そしてスポーツが、性別、人種、年齢など様々なことにとらわれず、一人一人、皆が心から純粋に楽しめるものに変わっていくことを願っています。2023/12/20