内容説明
本書は、1950年代のアメリカ小説を論じた関西英語英米文学会でのシンポジウムを発展させたもので、アイデンティティや自己実現をキー・コンセプトとして50年代アメリカ小説および社会の特徴を詳細に吟味し、そのアファーマティブな性格を明らかにすることを目的としたものである。
目次
第1章 1950年代のアメリカ―豊かさのもたらしたもの
第2章 アイデンティティと人間理解
第3章 『老人と海』における海の持つ二重の意味
第4章 「あること」と「なること」―ソール・ベロー『雨の王ヘンダソン』のアイデンティティ・クエスト
第5章 ラルフ・エリスン『見えない人間』
第6章 トルーマン・カポーティ
第7章 ティリー・オルセン「謎かけ遊びをして」―二つの旅立ち
第8章 ケルアックのアイデンティティ追究―『路上』を読む
第9章 J・D・サリンジャー『ライ麦畑でつかまえて』
第10章 ノーマン・メイラー『鹿の園』―社会的自己を超えて
著者等紹介
町田哲司[マチダテツジ]
関西外国語大学外国語学部助教授
江尻雅一[エジリマサカズ]
関西外国語大学外国語学部助教授
片渕悦久[カタフチノブヒサ]
同志社女子大学現代社会学部助教授
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感想・レビュー
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田中峰和
4
アイデンティティという概念を世に知らしめたのは、エリクソンという精神分析で有名な心理学者であった。戦後、世界の富の大半を握り世界全体を支配下に置いたアメリカ。50年代は、ソ連と中国との冷戦がはじまったが、その不安は文学界にも影を落とした。最初に紹介されるヘミングウェイは20年代から活躍していたが、「老人と海」は52年。トルーマン・カポーティは「遠い声、遠い部屋」で青年期の自己実現を描き、「ティファニーで朝食を」で女性の自立を描こうとした。サリンジャーは「ライ麦畑でにつかまえて」で思春期の若者を描いた。2024/07/30
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