内容説明
本論考の特徴は、『デカルト的省察』を一つの完結した全体として読み解くことである。全集第一巻に収録された『デカカルト的省察』は、フッサールがほぼ二カ月で一気に書き上げ、ひとまず完結した著作と認めたものであり、むしろその思索のまとまりがフッサールの意図の一貫性を明瞭に示していると判断するからである。本書の執筆に当たって自らに課したのは、自分の解釈に都合の悪い部分を素通りする逃避を自分に禁じて、ともかくこの著作全体を貫くフッサールの意図を確定することであった。改めて確認できたのは、フッサールは驚くほど綱領的に一貫しており、しかも他の著作とも整合的に思索している、ということである。本書の題を少々大仰に『フッサール現象学の理路』とした所以である。
目次
第1章 現象学の理念と方法(デカルトから受け継ぐべきもの;明証という方法理念 ほか)
第2章 エゴの自己構成、世界と自我(エゴの解明という課題;意識の相関的研究 ほか)
第3章 相互主観的世界の構成(相互主観性論の構想と射程;他ナルエゴおよび共通の自然の構成 ほか)
第4章 根拠づけの現象学的理念(超越論的解明の必当然性;フィンク『第六省察』の問題提起 ほか)
著者等紹介
工藤和男[クドウカズオ]
1950年生まれ。同志社大学文学部卒業。同志社大学大学院文学研究科博士課程後期退学。現在、同志社大学文学部教授。博士(哲学)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。