内容説明
北西太平洋のマイワシ資源量は1960年代から80年代への20年間に十数万トンから数千万トンへと増加した後、90年代に入ってピーク時の1/10以下に減少した。この変動に伴ってマイワシは、成長、生残、回遊、成熟、産卵などの生活史全般にわたって劇的な変化を示し、それらの変化は詳細な調査によって個別に詳しくとらえられている。そして、一連の研究によって得られた知見は、資源変動の解明には生活史全体を通じた生態変化の把握が必要であることを示唆するものであった。1998年4月1日に、東京水産大学で開催された「マイワシの資源変動と生態変化」と題するシンポジウムの目的は、マイワシの大規模な資源変動に伴って各海域でみられた生態変化に関する知見を総括して、資源変動に伴うマイワシの生態変化の全体像を描き出し、マイワシの資源生物学的特性を明らかにすることであった。本書は当日の講演内容を執筆して編集したものである。
目次
1 資源量変動の経過(未成魚・成魚資源;シラス資源)
2 成魚の生態変化(親潮域での回遊範囲と成長速度;対馬暖流域での回遊範囲と成長速度;成熟;産卵)
3 卵・仔魚の生態変化(産卵期と産卵場;仔魚の成長と生残)
4 稚魚・未成魚の生態変化(黒潮続流域の北上稚魚;九州西方海域の稚魚・未成魚;越冬期の未成魚)