内容説明
河合栄治郎は戦前期の時代状況の中で、その生涯を「自由の気概」をもって生きた唯一の知識人であった。昭和初期に、左の全体主義であるマルキシズムが論壇を席巻すると、その自由を阻害する危険性を追及した張本人である。やがて、右の全体主義であるファシズムが台頭すると、身の危険を覚悟で一人これを痛烈に批判した。
目次
序章 “進歩的大衆人”が日本を漂流させる
第1章 理想主義と反骨精神
第2章 孤軍奮闘の農商務省時代
第3章 帝大経済学部の「白熱教室」
第4章 二年八カ月の欧州留学
第5章 「左の全体主義」との対決
第6章 ファシズムに命がけの応戦
第7章 正面から放った軍部批判の矢
第8章 名著『学生に与う』誕生
第9章 戦後を見通した「有罪願望」
終章 戦闘的自由主義者の水脈
著者等紹介
湯浅博[ユアサヒロシ]
国家基本問題研究所主任研究員、産経新聞客員論説委員。1948年、東京都生まれ。中央大学法学部卒、プリントン大学公共政策大学院Mid‐Career Fellow program修了。産経新聞入社後に政治部、経済部を経てワシントン特派員、外信部次長、ワシントン支局長、シンガポール支局長、特別記者・論説委員を歴任。2018年6月から現職(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ue3104
4
安倍元総理がSNSでアップして話題になった本。自由を徹底的に追求し、最後まで信念を曲げずに戦った河合栄治郎氏の生涯が描かれている。もし、前後日本にこの人がいたら…ということが書かれていた。安倍元総理がこの本を読み、その存在になってくれたらと期待した。2021/03/26
ぱぴ
2
河合栄次郎という思想家、自由主義者を知れたことは、私の人生に於いて大きな財産です。本人亡き後、門下生や同僚がどの様に思想を受け継いで戦後の日本を導いてきたかが知れて良かった。もっとたくさんの知識や理解を深めて、今後も様々な角度から明治以降の日本や河合さんを知っていきたいです。蠟山政道さんや南原繁さんが河合さんの側に居てくれて本当に良かった。 最後に、同じ誕生日。誇らしいです。2020/07/01
Hiroki Abe
2
思想哲学本の類と思ったら、河合栄治郎の人生と周辺を割と客観的に紹介すると言った内容だった。自由主義は素晴らしく、マルキズム、ファシズムに唯一、対抗し得た主義であるということらしい。2019/07/17
WS
0
河合栄治郎という人間の真っすぐで全力な生き方に感動した。左右両側の全体主義者から攻撃されても、自由を訴えたその立派な姿勢に感動した。言論の自由を守るからには、相手の言論の自由も守るのは、言うは易し行うは難し。命を削っても訴え続け、そして教え子も受け継いだ。安井には良心の呵責が最後まであったのだと思った。そして、社会思想研究会にあの白川方明がいたというのは驚いた。2024/02/14