内容説明
昭和二十年八月十五日の終戦によって、ソ連は軍事俘虜とはいえないはずの一般市民や婦女子まで含め、百万名を越える日本人を、酷寒のシベリア、そのほかのソ連領土に拉致、抑留し、しかも長期にわたって帰国をゆるさず、粗悪な食料をあたえ、強制労働にかりたてた。ソ連軍満州侵攻後の、いわれなき受難を描く。
目次
第1章 鉄格子の中で
第2章 裁かれた神
第3章 真夏の悪夢
第4章 広野の彷徨
第5章 落日の満州
第6章 哀しき虜囚
第7章 赤旗の嵐
第8章 力との闘い
著者等紹介
小松茂朗[コマツシゲロウ]
大正5年、長野県に生まれる。昭和18年、中央大学法学部卒。読売新聞社入社。東京新聞に転じ、社会部記者。19年、応召。満州孫呉電信隊に入隊。終戦にて、シベリアに抑留される。23年、帰還。東京新聞へ復社。社会部記者、支局長をへて社会部次長。52年、日本作家クラブ賞受賞。平成10年12月、歿(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ちさと
23
本書は、悪名高い「ソ連刑法58条」によって重労働20年の刑に処され、シベリアでの強制労働からダモイ(帰国)までを描いたもの。著者は19年応召、満洲孫呉電信隊に入隊後、実際にシベリア抑留を経て23年に日本に帰還された。主人公は見習下士官福原(実在人物)。ご自身の体験も織り交ぜつつ、希望と絶望行き来する心情をうまく描写している。天皇の軍隊からスターリンの社会主義への思想教育、いわゆる「民主化」についても詳しい。旧秩序の崩壊、極限の状況下で激しい振幅の中に投げ込まれた時、理性を保つものは何か。2025/04/30
佐倉 海人
0
満州になだれ込んだソ連軍の暴虐ぶりや、シベリアでの死すれすれの環境で生き延びた話です。 ソ連の「人を人とも思わない」やり口をこれでもかと見せられます。2023/01/02