内容説明
設計・生産・整備の充実と発展がなければ航空兵力は成り立たない。大戦中、日本の航空戦を陰で支えていた、知られざる努力と奮闘のシステムを綴る感動作。現代戦の舞台裏で地道な作業に勤しんだ人々の記録。夜戦ヘルキャットや日本の対潜哨戒機などテクノロジーを駆使した航空戦の陰の戦いを描く三篇も収載する。
目次
チーフデザイナーとの接点―航空機設計者たちの素顔に触れて
三型に携わって―一式戦闘機「隼」の末期の生産、実戦と改造
半田の青春ありき―中島飛行機、海軍御用達の製作所で働く
生産を戦力に結ぶ者―テストパイロットのプロ魂ここにあり
軍偵と排気管―最前線整備兵たちの知られざる努力
再生零戦今昔物語―ニュージーランドへ運ばれた二二型
ドロナワ式対潜作戦始末―海面下の脅威と闘う飛行機
各国偵察機、実力くらべ―日本、ドイツ、イギリス、アメリカの考え方の違い
夜の「ヘルキャット」―単座戦闘機とレーダーの恐るべき組み合わせ
著者等紹介
渡辺洋二[ワタナベヨウジ]
昭和25年(1950年)、名古屋に生まれる。立教大学文学部卒業後、航空雑誌の編集勤務。53年、第2次大戦の軍航空に関する執筆に専念。平成22年(2010年)、職業としての軍航空の著術を終了。以後、余暇を航空史研究にあてる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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roatsu
17
副題通り、大東亜戦争における航空兵器の設計・生産・戦場の最前線の様々なエピソードを拾遺し、日米航空戦史を長く手掛ける著者流の掘り下げを行った意義深い短編集。航空分野の個々のエピソード検証も、帰納的な戦史全体の理解に繋がる重要な作業であることを再認識。数十年前に生存者達が健在だった時代に証言や記録を集めて、放っておけば埋没と散逸を免れない往時の実相を文章化した著者の功績は大きい。責任感が強く人間的に潔癖な方ほど戦後は黙して語らず、役立たずの感傷や決めつけは大得意だが、真に必要な論理的検証と教訓活用は大の苦手2020/03/17
Mr.deep
3
航空機や航空戦周りのエピソード満載のエッセイ集。設計や生産よりの描写が目立つので個人的な好みからはちょっと外れてて残念。2024/06/09
えぬ氏もわるよのぉ
1
久々に渡辺洋二氏の本を読んだ。関係者に綿密に取材した氏の著作は旧軍用機愛好者の間で評価が高く、僕も戦史にのめり込んでいた頃はずいぶん愛読した。今回は短編集だが、最初の6篇はやはり取材に基づくもので、戦後四半世紀経った今では史料的価値が高い。次の2篇は資料に基づき日本の哨戒偵察の技術的運用的拙劣さを辛口批評。取材に基づく著作とは趣きが違うが、内容はごもっとも。最後の1篇は米海軍の夜間戦闘機がテーマ。レーダーのシステマチックな運用は、やはり当時の日本とは雲泥の差。2020/06/09