内容説明
ナポレオンが欧州に君臨した時代、近代戦術の基礎となることがいくつか起きていた。彼の創設した“大陸軍”は組織、戦い方がこれまでの軍事常識とは大きくかけ離れており、欧州各国は完全に奇襲され対抗できなかった。近代戦術の原点といわれるナポレオンの戦いの神髄とは何なのか。その強さの秘密を解説する。
目次
第1章 散兵と突撃縦隊
第2章 野砲の機動的運用
第3章 騎兵
第4章 大陸軍(グランド・アルメ)
第5章 兵站
第6章 将帥ナポレオン
第7章 パルチザン
著者等紹介
木元寛明[キモトヒロアキ]
1945年、広島県生まれ。1968年、防衛大学校(12期)卒業後、陸上自衛隊入隊。以降、第2戦車大隊長、第71戦車連隊長、富士学校機甲科部副部長、幹部学校主任研究開発官などを歴任して2000年に退官(陸将補)。退官後はセコム株式会社研修部で勤務。2008年以降は軍事史研究に専念(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ゲオルギオ・ハーン
26
元陸将補であり、数々の戦術系読み物を書いている著者が25年にわたるナポレオン戦術研究の成果として書いた一冊。文庫本の割に詳細に書かれている。ナポレオンがどうして大戦果をあげることができたか、どうして敗れたかという初歩的な疑問から、ナポレオンの軍隊の先進性をよく解説しているのでとても面白かった。移動速度や戦術眼ばかり取り上げられがちのナポレオンだが、教育や後方支援システムもとても重視しており、彼の鋭い戦術を実現できたのは熟練した将兵と安定した後方支援、整備性と対応力に優れた砲兵と大砲のおかげであった。2022/10/13
鐵太郎
18
自衛隊の上級幹部が書く、近代的な戦術思想の視点から見たナポレオンの軍隊のありよう。ナポレオンの革新的・先進的なところからその限界までを、わかりやすく丁寧に解説してくれます。こう言う視点の本って、好きですね。戦術の革命児であったナポレオンが指揮すれば戦争に勝利でき、偉大なるワンマンである彼がいないとナポレオン戦術は機能しなかったという結論は面白い。こういう経歴の人が戦国時代とか欧州の戦争とかを解説する本って最近よく目にしますが、玉石混淆なところが気になります。この本は玉か石か。読む人が判断しないとね。2020/04/01
鳥山仁@『純粋娯楽創作理論 第二章』発売
3
ナポレオンとその将星の個人史や戦役史は邦文でも多数あるが、まとまった軍事システム史は珍しかったので拝読。原典としてジョミニとナポレオン本人の書簡を引用するというスタイルで、ナポレオニック好きのポイントを押さえた良書だった。また、改めてベルティエの「地図上にリアルタイムで戦況を表現する」という特殊な才能を実感。今ならパソコンがあるから子供でもできるかも知れないが、当時としては代替が難しかったはずだ。2020/04/11
タカバル
0
グランド・アルメ(フランス大陸軍)を最強たらしめたのは1人の天才、ナポレオンによるところが大きい。しかし、彼は行き当たりばったりでなく、常に最悪の事態を想定し周到な準備を怠らなかった。有能な指揮官に加え、麾下の将兵達は、長期間の演習で力をつけ、戦場では困苦欠乏に耐え戦い続けた。数々の勝利は、名も無き兵士によって成し遂げられたと言える。2024/01/03