内容説明
爆撃法のなかで、最も効率は高いが、搭乗員の肉体的負担と被弾の危険度が高い急降下爆撃―その熾烈な戦いに身を投じた人々の実際。
目次
複葉艦爆と大陸の空―艦上爆撃機はいかに育ったか
不均衡なる彼我―英重巡と空母を沈め去る
艦爆隊指揮官は語る―操縦と偵察の真珠湾からマリアナ沖まで
敵艦隊への最後の攻撃―空冷「彗星」が米主力艦に迫った
夜襲隊、沖縄へ飛ぶ―芙蓉部隊の最多出撃操縦員が見た目標
ガンシップ「銀河」の一撃―多銃装備機の実戦記録
それぞれの「東海」―これが対潜専用機の攻撃だ
零戦と五十番爆弾―爆撃機としてのゼロファイター
著者等紹介
渡辺洋二[ワタナベヨウジ]
昭和25年(1950年)、名古屋に生まれる。立教大学文学部卒業後、航空雑誌の編集勤務。53年、第2次大戦の軍航空に関する執筆に専念。平成22年(2010年)、職業としての軍航空の著述を終了。以後、余暇を航空史研究にあてる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
yamatoshiuruhashi
54
急降下爆撃は体感的に殆ど垂直に落ちて行くらしい。体が定まらぬマイナスGの中で目標を見失わず、投弾後の引き起こしでは強烈なプラスGに見舞われブラックアウトすることもある。背骨を痛めることは間違いないとのこと。そんな過酷な機種の黎明期から終焉までを追い、多くの体験者の話を採取。貴重な記録である。私はジェットコースターにも好んでは乗らない。それなのに急降下爆撃機の中で意識を保ち、モールス無線を打って航法計算をするのは人間技ではないと思える。読み進めるに余りの被害(戦死者)の多さに胸が痛くなった。2022/01/31
roatsu
19
本作も既刊の増補改訂版であり、海軍爆撃機(急降下爆撃可能な機をこう分類した。水平爆撃ができても爆撃機と呼ばない点に注意)の揺籃、全盛、苦戦から壊滅への時系列を辿りつつ戦史を理解する上で重要となる個別のエピソードを掘り下げる。氏の航空戦記は単なる武勇譚ではなく、日本陸海軍航空隊が米国等のそれと戦った組織の戦いとその構成員として命を懸けて出撃・整備にあたった将兵の死闘の実相を後世の日本人として満腔の敬意を忘れず伝えるものである。これ一冊を読むことで史実、かつて存在した巨大組織の実態、航空将兵を志した先人達の心2019/09/03
スー
18
5アメリカから取り入れた急降下爆撃を試行錯誤しながら自分達の物にし戦争に突入して最後に特攻で終わる流れを各爆撃機の活躍を通して追って行く内容です。94・96式艦爆の支那事変がかなりページを使い99式と彗星が少なめであとは銀河・東海そして爆装した零戦で終わります。急降下爆撃の搭乗員達は70度近い角度で突っ込み引き上げる時には5~6Gが体にかかりブラックアウトをおこしたり目玉が下がる経験をして胃下垂に苦しむし実戦では空母艦載機の中では1番の犠牲を出すほど過酷だった。よくこんな体験しても飛び続けられるなんて凄い2022/01/11
たい
1
本書は文春文庫から出版されていた『必中への急降下』に2018年の記事「零戦と五十番爆弾」を加えたものであって、既にそちらを読まれた方にとっては内容の重複が…ということに気がついたのは読み終えてから。夢中で読んでいて気づかなかった。本書の半分を占める「複葉艦爆と大陸の空」は日本の艦爆の発祥と94、96式艦爆の実戦を伝える貴重な記事で、急降下爆撃の性質をあらためて知ることができるし、エピソードも面白い。追加された爆装零戦の記事も本書の締めにふさわしい印象に残るもの。読んで良かった。2019/09/16