内容説明
空母瑞鶴から見たソロモン海戦―翻る戦闘旗のもと、日米空母機動部隊による手に汗にぎる対決が繰りひろげられた。綿密な取材を積み重ね、貴重な証言、膨大な史料を駆使して世紀の大海空戦を詳細、明解に描き切った珠玉のノンフィクション。日米双方の視点により、戦いの実相を正確に捉えた戦記文学の醍醐味。
目次
第1部 新機動部隊の誕生(ミッドウェーの仇;第三艦隊始動す;「誓って再起を期す」;ソロモン海めざして)
第2部 「戦闘旗掲ゲ!」(新「瑞鶴一家」の男たち;第三艦隊機動す;第二次ソロモン海戦;全機発艦せよ;南十字星の輝く下で)
著者等紹介
森史朗[モリシロウ]
1941年、大阪市生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒。専攻・国際関係論。日本文藝家協会会員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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roatsu
21
既刊の文庫化。緒戦の快勝から一転、中盤の死闘、そして末期の破滅的惨敗へと半ば必然的に推移していく日本海軍の対米海空戦の内幕を主に艦首脳や参謀、連合艦隊司令部等の指揮層の動きを中心に描き出す意義深い作品。戦争(ばかりではない)に付き物であり一国の興廃すら決めかねない「錯誤」の恐ろしさ、これの元となる固定観念と情報軽視、特に意思決定権を持つ組織の上位層の間で横行する情実や不作為の始末の悪さをまざまざと見せつける描き方となっている。これは何も日本海軍という特殊な組織に固有で生じた問題ではなく、70余年の時を経て2019/03/01
もっぱら有隣堂と啓文堂
9
この巻は1942年6月の野元艦長着任、北方部隊参加、ミッドウェー惨敗をうけた機動部隊再編、8月の第二次ソロモン海戦まで。山本五十六の恩情により南雲長官・草鹿参謀長体制再び。これは多くの批判があるところだが否定の余地がない。平時はそれでもすむが戦時に決断できないトップは不要だろう。ガダルカナル島支援のための第二次ソロモン海戦は南雲とフレッチャーという慎重型のチキンなトップがともに勇気を出したもう一押しが出来ず痛み分けというなんとも冴えない結果となる。搭乗員の証言からも米軍輪形陣の防御力は非常に強力だと分かる2025/06/13
baron_yamaneko
2
『丸』連載が初出。『勇者の海』の続編『空母瑞鶴の南太平洋海戦』を文庫化にあたって改題分冊化したうちの上巻でミッドウェー敗戦後の機動部隊再建から第二次ソロモン海戦辺りまで。 野元艦長や搭乗員の回想情報が多く、再建後の結束不十分な雰囲気がわかるのがいいのと、個人逸話探しの足がかりに使えるかも。第三艦隊の新任幕僚(高田・末国参謀ら)目線の南雲・草鹿評が手厳しく一方的。 部隊行動レベルだと一航戦戦闘機隊のブカ島派遣の話が珍しいと思います。い号作戦よりも前の母艦機の陸上使用失敗例。モリソン戦史?の米軍側情報も多め。2019/01/27
junkoda
1
『空母瑞鶴の南太平洋海戦』の文庫版上巻。誤植みっけ:「重巡島海」(p232)。手書き原稿を編集部が打ち込んでいるようだ。2019/01/02