内容説明
三度にわたる、七年にも及ぶ兵隊暮らしの原体験をいしずえに『螢の河』で直木賞を受賞して以来、営々として戦争小説をつむいできた戦争文学の第一人者が、心意気横溢に兵隊と戦場生活を語り継ぐ。兵隊たちの語り部として、各地に飛び、聞き取りを行ない、あざやかに、臨場感あふれる筆致で紙上に再現する戦話集。
著者等紹介
伊藤桂一[イトウケイイチ]
大正6年、三重県生まれ。昭和13年より終戦まで三度にわたる満7年の軍隊勤務。上海で終戦。陸軍伍長。戦後十数年、出版社の編集部勤務。37年、「螢の河」で第46回直木賞、58年、「静かなノモンハン」で第34回芸術選奨文部大臣賞及び第18回吉川英治文学賞を受賞。60年、紫綬褒章受章。芸術院会員。平成28年10月、歿(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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roatsu
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対米英開戦以後も日本の主戦場であり、長く苦しい「戦争」の舞台だったにもかかわらずその実相は意外なほど知られていない支那戦線について、様々な戦場生活を拾遺し克明に甦らせた短編集。支那の地理、重慶軍、八路軍(暴虐な中共私兵団の原型)、保安隊等の各種勢力、旧軍の兵役区分ほかすらすら読むには予備知識の整理が必要だが、本作を読めば同地に赴いた父祖達が何を考え、何を敵として戦い、どのような兵営生活を送ったかという実相が見えてくる。何より主人公達は市井から出征した往時の我々であり、心身健康な壮丁には軍隊経験が当たり前だ2018/05/16