内容説明
飢餓、寒気、マラリア、赤痢、そして、連合軍の猛攻撃―東部ニューギニアの高峰サラワケットで無念の涙をのんだ日本軍兵士たちの凄惨な敗退の途を描く。絶え間なき熾烈な砲爆撃下、己れの使命を果たさんと果敢に戦いぬいた一砲兵が最悪の戦場から奇跡的に生還した自らの体験を礎に活写するノンフィクション。
目次
第1部(ラエの石;サラモア布陣;弾丸の死角 ほか)
第2部(頂上アタック;登頂の朝;泥濘の湿原 ほか)
第3部(キアリ到着;生と死の間;躊躇の沈黙 ほか)
著者等紹介
佐藤弘正[サトウヒロマサ]
大正10年2月12日、新潟県新発田市に生まれる。昭和13年3月、県立新発田中学を卒業。14年4月、生野市三菱金山技術員養成所修了後、15年4月、和歌山県新宮市円万寺鉱山測量課勤務。17年1月、東京都立川東部78部隊高射砲隊に入営。18年1月、ニューギニアのラエ、サラモアの防空戦を経て、サラワケットを越え、パラオへ撤退。19年1月、ラバウルに復帰し、対空戦に参加。終戦を迎え、捕虜となって苦役に服し、21年3月、横須賀に復員、帰郷。平成26年4月、歿(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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カラヤ3
1
歩兵の戦記物は何冊か読んだが高射砲部隊の兵隊の戦記は初めて。3次元の相手に弾を当てる難しさがわかったし、歩兵よりも特殊兵として1段上の扱いを受けてるのが笑える。文中で海上輸送をUボートに妨害されることを心配する記述が何か所も出てくるが、最初潜水艦にしてはおかしいなと思いながら読んでたが、アメリカのPTボートのことだろうなと思った。2021/08/28
ビタミン
0
★★★★☆ 池袋のブックオフにて購入。 祖父が陸軍に徴兵された世代なのでこの手の話は親和性が高い。 (とはいえ祖父は本土で通信兵をやっていたので前線には出ていない) 文体が他の回想録と違って情緒的というか、物語味が強いと感じていたが、後書きで戦友会にて配った原稿が原本と聞いて納得。2024/10/26
読書家さん#XzPJFZ
0
記述に矛盾が生じている箇所があり、不思議だったが後書きによると途中で執筆を断念し、20年余り後に続きを書いてようやく一冊にまとめた物であるとい旨であったので納得した2024/04/11
teitowoaruku
0
生と死が紙一重であったサラモア、ラバウルでの対空戦、装備も食糧もない病人の峻険サラワケット越えなど、人間の限界を超えた敢闘の記録。初年兵は一人がヘマをすると全員が連帯責任でビンタをとられたが、戦場で弱った兵士、使い物にならなくなった兵士は見捨てられたという話が、軍の全てを表しているように感じた。2023/10/01
雲をみるひと
0
最前線の体験者しか表現しえない内容。 作者はよくこのような記録を遺されたと思う。 久しぶりに鳥肌が立った。 人間窮地に追い込まれると自分自身以外は守れないし守らないことがよくわかる。