内容説明
救助した俘虜111名、うち65名を艦長は、なぜ殺害したのか。上級司令部のスケープゴートとなって刑死した元戦隊司令官左近允尚正中将を主軸に、国家と組織の軋轢の中で仕組まれた英国戦争裁判香港法廷の実情を描く、異色のノンフィクション。
目次
プロローグ
第1章 風雲
第2章 インド洋
第3章 撃沈
第4章 戦塵
第5章 裁判
著者等紹介
青山淳平[アオヤマジュンペイ]
1949年山口県下関市生まれ。松山商科大学(現・松山大学)大学院修了。国家と個人のあり方をみつめた著書多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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鐵太郎
14
最初に出て来るのが当時香港領事を務めていた佐々淳行氏なのにちょっとびっくり。昭和40年に、香港で処刑された左近允海軍中将の息子さんを案内したエピソードは前にどこかで読んだな。それから、時代を飛びながらビハール号を沈めた日本海軍の作戦と、乗客たちの殺害事件のこと、そしてその後の、くっきりと明暗が分かれた二人の高級士官の身の処し方。どちらが明でどちらが暗なのか。嗚呼。 ──黛治夫元大佐は、昔はけっこう高く評価していたんだがなァ。2018/02/08
植田 和昭
11
ビハール号事件の事は、知っていたがあまり詳しくは知らなかった。インド洋での潜水艦による船員殺害事件は、本で読んでいたが、この事件を読んで感じたのは、利根艦長黛艦長のビハール号撃沈の不自然さ。(拿捕を命じられたのに勝手に撃沈して自らを正当化)さらには、裁判で自分はキリスト教徒であって、民主主義を信奉していたなどと姑息な助命嘆願。もとはと言えばドイツから来ていた船員の人的殲滅の要請が口頭命令となってきたものだと思うが、当然文書での命令を要求せねば。現場で命令して殺害したのはあんただろ。言語道断の所業。2023/09/10
チャゲシン
2
伊東潤『信実の航跡』を読みビハール号事件の真相知りたくて 左近允司令官は最終的に捕虜は全員上陸と命令したが すでに編成替で指揮下を離れていた黛艦長は捕虜を洋上で殺して捨てる 武士らしく言い訳せず刑場の露と消えた司令官と、自己弁護の末に助かった艦長 左近允司令官は立派だが、自己弁護に徹した黛艦長が悪く書かれる。左近允司令官は立派だが、命令に背いて百人超えの捕虜を殺さず連れてきた行為の挙げ句抗命罪を恐れてのか殺さなればならない決断をした黛艦長。わからん、わからんです。コメント不可能ですわ2023/11/13