内容説明
世界に先がけて、日本陸軍が独自に開発した戦略偵察機―百式司令部偵察機。敵地奥ふかく、高空を高速で一気に飛翔、貴重な情報をいだき、連合軍戦闘機群を尻目にゆうゆうと姿をくらます。日本の偵察機の黎明から、九七司偵、神風号、そして百式司偵にいたる苦難の足跡と実戦場での活躍を綴るノンフィクション。
目次
第1章 司偵への道程(直協偵の萌芽;戦闘機より速い偵察機;見事な出来ばえ)
第2章 雄飛する翼(「神風」号、ロンドンへ;戦略偵察機部隊の誕生;長距離と高空の苦闘;千里を往く「虎」部隊;陸海軍協力作戦;新型機を望む声)
第3章 百式司偵の登場(新進気鋭の設計者;時速六百キロに挑む;飛行実験部の使命;司偵隊、有情)
第4章 戦火の飛翔(用兵者の求めるもの;キ70の失敗;ターボ付エンジンの完成;遅れた後継機作り;武装司偵の出現)
第5章 落日の彼方に(新司偵の泣き所;搭乗員の運命;特別攻撃隊の出撃命令;ラバウルの一機)
著者等紹介
碇義朗[イカリヨシロウ]
1925年、鹿児島生まれ、東京都立航空工業学校卒。陸軍航空技術研究所をへて、戦後、横浜工業専門学校(現横浜国立大学)卒。航空、自動車、鉄道などメカニズムと人間のかかわり合いをテーマにドキュメントを発表。航空ジャーナリスト協会会員。横浜ペンクラブ会員。自動車技術会会員。カナダ・カーマン名誉市民(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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スー
20
130戦闘機より速い機体として開発された百式司令部偵察機の開発と活躍と日本偵察機の発展史。日本は戦闘機や爆撃機についてはどういう機体が欲しいという目標があったけど偵察機は陸軍は目指す物がなかったので少数の人間がスピードと航続距離だけを追求して開発する事ができ97式偵察機が完成。そして更なる高速機として双発偵察機の開発が始まり百式司令部偵察機になる。地味だけど必要な機体の偵察機の苦労と活躍を知ることができました。2020/09/25
roatsu
6
戦前日本の航空技術の一つの頂点を極めた100式司偵の開発と戦歴のみならず、司令部偵察機という今日の軍事衛星の魁ともなった戦術思想が日本陸軍で芽生え、多くの偉大な先人達の熱意と活躍で形を成し多大な戦果を上げていく奮戦記が心に深く刻まれる。旧陸海軍を通じ最も優れたパイロットと言える荒蒔義次少佐が支那事変時に司偵隊を率いていた事実を初めて知って驚いた。空に憧れる少年として戦中を生きた父が最も好きな日本機であり、幼い頃に隼と新司偵の話を聞かせてくれた思い出が甦る。確かな記述で陸軍航空の金字塔の戦史を伝える労作。2016/11/06