内容説明
砲・工兵として陸軍士官学校を卒業した候補生はさらに砲工学校で学び、高等科に進んだ中から最優秀者を選抜、帝国大学で専門知識を研鑚させる員外学生制度。作戦優先思想のもとに技術を追従させる陸軍の旧弊において、陸軍大学優等組にも遜色のない実力を発揮した技術系高級将校―知られざる員外生の実態を描く。
目次
第1章 陸軍員外学生
第2章 土木系員外学生の群像(陸地測量部;築城部本部 ほか)
第3章 官衙勤務をした員外学生(中央官衙とその外局;省部要職に就いた員外生 ほか)
第4章 戦争は石油に始まった(陸軍は石油に苦悩した;燃料廠誕生のシナリオ ほか)
第5章 員外学生の光と影(戦車の父原乙未生;レーダー開発のエース佐竹金次 ほか)
著者等紹介
石井正紀[イシイマサミチ]
昭和12年、東京品川に生まれる。早稲田大学第一理工学部建築学科卒業。千代田化工建設(株)、千代田テクノエース(株)を経て、現在、石井正紀技術士事務所を主宰。在社中は主としてプラントの建設に従事し、エクアドル、サウジアラビア、アルジェリアに長期滞在のほか、ウズベキスタンの鉄骨橋梁会社の技術指導を担当した(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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無重力蜜柑
9
面白かった。極めて労作。帝国陸軍には理工系兵科(主に砲工兵)の優秀者を砲工学校卒業後に帝国大学(主に東大)へ送り込み、三年間学生として過ごさせる制度があった。理工系の高度な専門知識を身に着けた彼らは員外学生と呼ばれ、技術本部を始めとする技術系部局の枢要ポストを占めるテクノクラートとなった。帝国陸軍のエリートといえば陸大出身の参謀将校たちだが、それらとは異なるもう一つのエリート集団が存在したのだ。そして、彼らに焦点を当てた総論的な研究は今のところ本書くらいしか存在しない。まさに陸軍史を補完する成果と言える。2024/07/20
とろとろ
3
旧軍にこのような制度があることに驚いた。ただ、大戦中に至ってはその制度の正当な進展が結局は望まれず、昭和天皇が「敗戦の原因は、わが軍人は精神に重きを置きすぎて科学を忘れたことである」と語られたことが、実に的確な表現であらせられたと思う。かつて読んだ振武寮の話も作戦の真相に迫るものであり、こうした美談ではない逸話が、戦争の史実としてより多く残ることを望むものである。2014/09/29