内容説明
寒さと戦い、飢えと戦い、戦友たちは孤独の中で死んでいった―ソ満国境でソ連軍を迎え撃った若き見習士官の抑留体験。日々、過酷な環境にさらされながら、明るさと希望を失わず、仲間とともに帰還の日まで懸命に生きぬいた青年の物語。
目次
満州の捕虜収容所とダモイへの行軍(満州の捕虜収容所;ダモイへの行軍)
捕虜が覚えたロシヤ語(ダワイ;ヨッポイマーチ;サバァカ;プララーグとクポーク)
シベリヤの捕虜収容所(A捕虜収容所;B捕虜収容所;C捕虜収容所;D捕虜収容所)
ダモイ(帰国)(シベリヤ第二鉄道を行く;ナホトカで肋膜の診断;日章旗翻る「信濃丸」に乗船;「鬼伍長」と怒りの再開;舞鶴、時まさに昭和二十三年九月二十三日)
著者等紹介
小川護[オガワマモル]
大正13年、佐賀に生まれる。昭和19年5月、朝鮮の清津府で現地徴集となり、歩兵第76連隊に入隊。ソ満国境の守備隊で終戦を迎え、シベリヤに3年間、抑留される。23年、復員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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キクチカ いいわけなんぞ、ござんせん
21
もちろん辛くて悲惨だったシベリア抑留だが、あえて明るくて楽しい出来事だけ書いた体験記。考えたら戦友達は同年代も多く、職業も様々、それぞれが自分の得意分野でもって何とか生き延びた。ロシア女性たちの水浴びを覗く為にわざわざ仕切りを作ってあげて、こっそり「覗き場」も設けたり、見張りのソビエト兵の銃を借りてヒョウを仕留めた話。捕虜に銃を貸す兵士ものんびりしたものである。男女兼用の仕切りのないトイレ。若いロシア女性と用をたしながらにこやかに会話する話。もちろん命がけであるが若々しい感性が滲む作品。2021/05/01