内容説明
暗黒のソロモン海上で日米の水上艦艇同士が演じたドラスティックな砲雷撃戦のドラマを刻々と変化をとげる水雷戦隊の航跡とともに見事に描いた傑作海戦記―わずか二百名が乗艦する白露型駆逐艦「五月雨」の開戦時からマリアナ沖海戦後の座礁離艦にいたるまでを艦橋配置に勤務する若き兵曹が活々と綴る。大戦中、最も酷使されたという駆逐艦乗員の汗と涙の暮らしを伝えるノンフィクション。
目次
開戦まで
比島上陸作戦
タラカン敵前上陸
魚雷と猛爆下のバリクパパン戦
スラバヤ沖の魚雷戦
連合艦隊出動のミッドウェー海戦
インド洋から太平洋への出撃
陸兵移乗す
ソロモン海付近の海戦
旗艦「由良」の沈没〔ほか〕
著者等紹介
須藤幸助[スドウコウスケ]
大正7年、小田原市に生まれる。小田原商業学校卒。昭和14年1月、現役徴集で横須賀海兵団に入団。同年5月、駆逐艦「五月雨」に乗り組み、発射幹部付となる。16年12月、義務服役延期となる。18年11月、海軍二等兵曹に任官。19年8月、座礁による総員退去まで「五月雨」乗り組み。20年8月復員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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スー
19
19筆者は水雷指揮官伝令という艦橋任務の下士官を務めいたので海戦時の艦橋のやり取りや普段の水兵の気持ちなど当時の日記を元にしているので当時の緊張感や感情が生々しく伝わってきます。駆逐艦は大型艦と違いコストが安いのと小回りが利くので色々な任務に駆り出され摩耗していく。対空戦闘では火力不足で敵機に有効打が無く無力感がすごかった。夜戦は日本駆逐艦隊の真骨頂と思いきやかなり混乱していて戦艦比叡を敵と勘違いして射撃してしまうし気付いて射撃中止命令も発射音で搔き消え伝わらず遂には比叡から打ち返される失態を演じるし2024/06/13
白義
13
末端の一兵員から、水雷船隊の激しい戦いが、簡潔ながらも端正な美文で描かれている。リアルタイムの記録でありながら、どこか冷静な距離感を持って書かれているのは著者の文章力の成せる技だろう。沈没兵の救助、味方の雷撃処分といった苦い体験が、兵士たちの温度差まで含めて記述されていて、軍隊というものが皮膚感覚で伝わる、読みごたえのある戦記となっている。一方で、雲の切れ目から差し込む陽光の美しさといった風景描写も見事で、死の家の記録なども読んでいたらしい著者の文才も見所2014/07/21
artillery203
6
駆逐艦五月雨の乗員として従軍した著者。その戦陣日記が元なので、非常に緊迫感がある。乗組員たちの考え方や不平不満など、戦争中とはいえ、そこにいるのは一人一人の人間なのだと感じさせる。弟にあてた手紙の内容は、厳しい中にも真理を含んでいる。2015/10/16
yamu
4
五月雨の乗組員だった著者による戦記。回想では無く、当時付けていた日記を元に書いているため戦闘時の緊迫感は簡潔ながら凄いものがある。2015/01/04
神鬼
3
開戦から座礁するまでの五月雨の一生を記したもの。日記ではあるが比喩表現などが中々良い。他の艦が沈没していくところや松原元艦長の言葉等いろいろと心にくるものがあった。2015/11/28