内容説明
排水量二万九八〇〇トン、全長二五七メートル、最大速力三四ノット、最大搭載機八四機―日本海軍随一の“幸運艦”と呼ばれながら、わが身を賭したオトリ作戦に出撃、ついに全身に敵弾を浴びて南海の水底に沈んだ空母「瑞鶴」―その最後の戦い・エンガノ岬沖海戦の全容を、多数の証言と日米史料を解析して精密に再現する海戦ノンフィクション。
目次
最後の母艦雷撃隊
台湾沖航空戦
捷一号作戦発動
機動部隊出撃
攻撃隊発進
米攻撃隊来襲
「瑞鶴」の最期
空襲下の溺者救助
エンガノ岬沖の夜戦
機動部隊解散
「初月」内火艇漂流記
瑞鶴仙影
著者等紹介
神野正美[ジンノマサミ]
戦後生まれのエンジニア。永年にわたって集めた日本軍関係者の証言・史料と、海外から得た膨大なデータをもとに、戦史の研究に取り組んでいる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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roatsu
14
日本の空母で最も武勲に恵まれ長きに亘り任務に就いた瑞鶴の最後の死闘と一連のレイテ沖海戦におけるエンガノ岬沖海戦の顛末を描く。生存将兵の克明な証言に加え対戦した米海軍の戦闘詳報も引用され資料的厚みも充実した決定版の一冊。栗田艦隊反転の真相に一石を投じた深井元少佐の著作と併せて読むと更に感慨深い。絶望的な戦況下、命賭けで最善を尽くした将兵達の奮戦は疑いようも無く後世の誇りだが、同時に司令層の作戦指導の支離滅裂さは日本人とその組織が現代も変わらず脱却できていない欠点として戦史からも真剣に省みられるべきだろう。2016/06/21
白義
8
日米双方の資料と膨大な証言者への聞き取りから多角的に再構成された、瑞鶴、そして小澤機動部隊の最後の激闘を描いた、記録文学の大傑作。様々な側面から多面的に戦場の姿が浮かび上がるも、それでも物語としての叙情性を失わず、自然に劇的な迫真の描写が続き、一人一人の乗員や関係者の素顔をそのまま描くことに成功している。資料も豊富で情報量も凄まじく、瑞鶴の艦生のなかでは最後期に絞ったことで密度も凄まじいものに。沈没してからも乗員それぞれの救出されるまでの様子がたっぷりと描かれる隙のなさである2014/07/21
tsuyoshi1_48
8
「強運艦」と呼ばれた正規空母「瑞鶴」最後の戦いを、日米双方の資料に基づき描いたドキュメンタリー。その身に搭載する飛行機は無く、最後の任務は敵機動部隊をひきつける囮としてのものでした。空襲の間隙を縫って護衛駆逐艦によって行われた、勇敢な救助活動には胸打たれるものがあります。膨大な取材に基づく力作です。 2010/06/13
aya
4
『秋十月、鶴は八〇〇〇メートルのヒマラヤ高峰を越えて、生まれ故郷へ向かうという。高空をあえぎながらも、必死に故郷へ向かうという。必ず故郷へ帰るという。 日本海軍の最後に残ったこの”鶴”も、ひたすら北を、故郷をめざした。圧倒的な米機動部隊を北へ誘致するために……。』(本書二九一ページ) 思わず涙がにじんだ。単なる記録文学にとどまらぬ大作。2014/03/31
tora
4
戦闘に参加した人々の証言が非常に多く、エンガノ岬沖海戦の瑞鶴の闘いが詳細に叙述されている。日米双方の資料を用いているため双方の動きがみえ、日米互いに通信でかなり苦しんだことがわかる。2010/10/23