内容説明
若き指揮官が日中戦争の最前線においてつぶさに見た果てしなき大陸戦の実体。個々の戦闘で、将校、兵士は何を考えて砲火に身を曝したか、在りのままに綴る。昭和十五年、見習士官として配属されて六年間―小隊長、連隊旗手、中隊長、歩兵砲隊長、大隊長の重責を担いながら転戦し、辛酸を嘗めた将校の悪戦苦闘記。
目次
第1章 鯨兵団
第2章 浙〓(かん)作戦
第3章 江北・江南殲滅作戦
第4章 湘桂作戦前夜
第5章 湘桂作戦始動
第6章 赤山島から湘郷へ
第7章 衡陽への突進
著者等紹介
佐々木春隆[ササキハルタカ]
大正9年、熊本県生まれ。昭15年、陸士卒(54期)、第40師団に属して華中・華南に5年8ヵ月転戦。21年、復員。元陸軍大尉・元陸将補・元防衛大学校教授(陸上防衛学)・京都大学法学博士(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Toska
8
著者は陸士出のエリートだが、自ら「瓢箪から駒」で軍人になった「小心者」と評する個性の故か、自分自身をも日本軍をも客観的に見ることができている印象。上層部の無謀な命令や自らのミスで部下を死なせたらどうしよう…と思い悩む場面が多く、指揮官には指揮官の苦悩があったことが分かる。略奪や破壊で迷惑をかけた中国の人々に対しても、責任者の立場から強い慙愧の念が示される。兵隊でも将軍でもない、「将校の戦記」として出色の内容。2023/07/25
好古
2
【感想】実質的には同著者の長沙作戦の続編と言っていいだろう。今まで昭和の戦争に関する本を何冊も読んできたがどれも政府や軍部などマクロの視点から書かれたものばかりで、では実際の戦場では兵士たちはどの様に戦い、どのような集団で行動し、そもそも戦闘とはどのように生起しどのように終わるのか…といったミクロの視点に興味を持ったのがこうした戦記を読み始めるきっかっけだった。しかし南方戦線は専ら熱帯の気候と飢餓と疫病との闘いであった。日本軍が正面切って正規軍と戦った記録を知りたかった。そして日中戦争の文献に行きついた。2024/12/23
高木正雄
2
日本軍の部隊運用とは機械的にはいかず義理人情で成り立っていたことがわかる。日本軍の下士官がいかに優秀であったかもよくわかる。平時でならばなおさらであったのだろう。本書は難解な言葉が多いように思ったが国語のお勉強にはいいかもしれない2023/10/15
あい
2
上の人を信頼できないと組織が崩れる。軍とはいえども、上下関係が機械的になしえるわけでなく感情はさけて通れない。これは他の人の著作でもよく聞く話。2019/02/28
dogu
1
佐々木春隆による戦記の2冊め。著者らにも太平洋の不利な戦況が徐々に伝わる。既に中国上空の制空権も連合軍に奪われていた。2023/02/27